経験と自信の限界
センスメイキングに関する数十年の研究、特にカール・ワイクによる研究は、リーダーが直接現実に直面しているわけではないことを示している。リーダーは、過去の成功によって形づくられた枠組みを通して現実を解釈している。経験は判断を鋭いものにするが、注意の幅を狭めることもある。
安定した環境では自信や決断力、パターン認識はリーダーに不可欠な特性だ。だが不安定な環境では、そうした特性が制約になり得る。リーダーが正しくあることに慣れているほど、不明確さは非効率に感じられる。仕組みが実行に最適化されているほど、不確実性は遅延のように感じられる。
やがて多くの企業は不確実性に十分に向き合い、そこから学ぶ前に、不確実性をすぐに解消することが非常に得意になる。
これは欠陥ではない。ほとんどの企業の設計に備わっている構造的特徴だ。
情報は上に上がるほど洗練される。不明確な要素は取り除かれ、初期の懸念は和らげられる。シニアリーダーに届く頃には、情報は整っていて、すでに解釈されているように感じられることが多い。だがこの洗練には代償が伴う。情報が信頼できるものに感じられる時点では、たいていもう「早期」ではないのだ。
重要なシグナルほど見えにくい
戦略的先見性の研究では長年、かすかなシグナルの重要性が強調されてきた。イゴール・アンゾフなどの思想家によって広まったかすかなシグナルとは、何かが水面下で変わりつつあるかもしれないことを表す、初期段階における不完全で不明確な兆候のことだ。
それはトレンドではなく、逸脱だ。
顧客の行動が少しだけ違う。次善策が当たり前になっていく。サプライヤーが馴染みのない質問をしてくる。内輪話のトーンが微妙に変わる。こうしたシグナルはいずれも単体では説明できるもののように感じられる。だが複数重なると、より深い変化を示していることが多い。
リーダーがこうしたシグナルを無視する傾向があるのは、不注意だからではない。かすかなシグナルは行動を要求しないからだ。シグナルが要求するのは注意だ。確実性が報われる環境では注意を払うことは正当化しづらい。
その結果、お馴染みのパターンが生まれる。初期のシグナルが現れ、既存の前提で解釈される。リーダーは確証が得られるのを待ち、慎重という名の下に行動が遅れる。確証が得られる頃には選択肢は限られている。
それぞれの段階は合理的に思える。だが全体として静かに戦略的選択肢を削り取っていく。


