経営・戦略

2026.01.23 11:30

「エレキのソニー」からの見事な事業転換、TCLとの合弁で完成に近づく“新しいソニー”の形

Shutterstock.com

BRAVIAの「魂」は受け継がれるのか

BRAVIAの価値は、画質の数値ではない。作り手の意図に近づこうとする姿勢であり、細部に宿る“気配”であり、現場のエンジニアが長い時間をかけて磨いた感性の集合である。

advertisement

この部分での差別化意識がコストの前で痩せ細ると、“SONY”ロゴは残っても信頼は消えることになるだろう。

地政学的なノイズも無視できない。米中の緊張が高まる局面では、供給網や関税、調達制約が想定外の形で効いてくる。中国資本が51%を握る枠組みは、北米市場で政治に絡め取られやすい側面を持つ。日本ブランドを冠していても、実質的には中国メーカーとなれば、米国輸出におけるリスクにはなるかもしれない。

しかし、最も重要なことは“人”だ。画作りを支えてきた中核人材のモチベーションが、今回の組織改革で引き抜き、退職といった形で揺らぐなら“魂”の継承は難しくなる。ドキュメントに残せる技術は移せるが、絵作りのような“カルチャー”は引き継ぐことが困難だ。

advertisement

それでもBRAVIAが生き残る価値はある

それでも筆者は、このニュースが悲劇だとは思わない。

TCLの先端パネルとコスト競争力が商品力を鍛える“筋肉”だとするなら、ソニーの映像処理とチューニングはテレビの価値を司る“頭脳”だ。筋肉と脳が噛み合えば、リーズナブルな価格で、高画質な製品が生まれることになるかもしれない。

また、ソニーにとってテレビは、単体で儲ける装置というより、家庭のリビングに体験を届ける窓であり続けてきた。ゲームも映画も音楽も、結局はテレビという窓を通じて消費者とつながる。

ソニーグループのセグメント別売上構成比の推移(2012年度~2024年度予測)。かって中核であったエレクトロニクス事業の比重が低下し、ゲーム、音楽、映画、イメージセンサーが収益の柱となっている
ソニーグループのセグメント別売上構成比の推移(2012年度~2024年度予測)。かって中核であったエレクトロニクス事業の比重が低下し、ゲーム、音楽、映画、イメージセンサーが収益の柱となっている

ソニーがこの十年で、エレクトロニクス企業からIP・エンタテインメント企業へと重心を移してきた以上、消費者とつながる窓を失うことは得策ではない。そうした消費者とつながる窓を守りながら、テレビの製造・供給にかかる負荷を下げるための合弁と考えれば腑に落ちる。

今回の提携は、メイド・イン・ジャパンのテレビが世界を席巻した時代に、静かに終止符を打つ出来事でもある。最後の砦だったソニーが、供給網と規模を外部に求めたことの徴性はあるだろう。

しかし同時に、これは“ブランドをどのように生き残させるか”を考えた上での決断でもあるはずだ。製品製造を任せつつも、ソニーのテレビ開発における思想を守り、最終製品の体験価値で勝負する。そこで勝てないのであれば、新しい企業に呑まれるのは致し方ない。

BRAVIAは魂を失うのか、それとも新しい翼を得るのだろうか?

SEE
ALSO

テクノロジー > サービス

CESから消えた「SONY」──会場の外で見えた“二つの身体”

編集=安井克至

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事