AIの議論の中心は、生成AIからAIエージェントへと移行している。AIエージェントは、ユーザーの代わりに目標を追求し、タスクを完了させるソフトウェアシステムだ。マルチモーダルに情報を同時に処理し、会話や推論、学習、意思決定などを行う。他のエージェントとの連携も可能だ。
ビザ(Visa)のライアン・マキナニーCEOはセッションのなかで、AIエージェントがユーザーの代わりに商品を探し、購入から決済までを自律的に行うエージェンティック・コマースを「デジタルコマースの第三の波」と位置づけた。「26年以降、真のエージェンティック・コマースへのシフトが始まる」とマキナニーは断言した。
特に強調していたのが、エージェンティック・コマースが中小企業にもたらす可能性だ。現在のデジタルコマースは少数の大手プラットフォームに集中しているが、AIエージェントはこの構造を根本から変える可能性があるという。
医療の分野でもAIエージェントへの期待が高まっている。ロイヤルフィリップスのロイ・ヤコブスCEOは、AIエージェントの実装は、医療業界が直面している慢性的な人材不足に活路を見出す可能性があると期待を込めた。
例に挙げたのが、がん患者のケアプロセスだ。患者が予約をした段階から、看護師や臨床医に代わってAIエージェントが準備を始める。患者が病院に到着したときには、AIがあらゆるシステムから必要な情報を引き出し、患者を迎え入れる環境を自動で整えられる時代が訪れそうだ。
退院後、自宅で療養する間もAIエージェントは患者一人ひとりに寄り添う。多忙な看護師に代わってAIエージェントが患者と対話し、その声に耳を傾け、医療システムにフィードバックを送る。24時間体制で患者を見守り、ケアの連続性を担保するその姿は、もはや単なる支援ツールではなく「一緒に仕事をする仲間」だ。
ただし、そのためには医療のプロセス自体を再構築する必要があるとジェイコブスは言う。「今あるやり方を根本から見直すこと━━それが大きな変化であり、最大の課題だろう」(ジェイコブス)。


