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2026.02.01 13:30

古河電工 森平英也が語る PBR1倍割れ脱却、サーバントで勝ち取った変革

森平英也|古河電気工業 代表取締役社長

森平は大学院で岩石鉱物学を専攻していた。就活で古河電工を選んだのは、人事に「石もガラス(光ファイバーの材料)も無機物で同じようなもの」と誘われたからだ。しかし配属先は工場の生産技術。地学は理学系で、生産技術は工学系である。院で学んだことは直接役に立たず、一から勉強し直さなくてはいけなかった。

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「現場に提案しても無視されたり怒鳴られたりすることばかりでしたね。でもそれがいい経験になりました。自分の提案が正しいかどうか判断できないから、わからないことは素直に質問し、いかにすれば現場がものをつくりやすくなるのか必死に考えました。何か押しつけるのではなく、みんなの声を聞いて進めるやり方は、工場にいた12年間に原点があります」

スタイルは現在も変わらない。社長就任後、パーパス策定プロジェクトを若手のチームに委ねた。それ自体がサーバント的だが、森平らしいのはそのあとだ。若手のパーパス案は、取締役会で否決されて再考を命じられた。しかしいくら考えても同じパーパスにいきつく。あきらめきれなかったチームは森平に直談判した。

「話を聞いて咀嚼すると私も理解できた。ならばと、取締役たちに私からも説明。時間がたったことで抵抗感がなくなったのか、約1年後の2回目の採決では、みなさん『いいね』と。うまく後押しできたと思います」

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もちろんボトムアップの提案が何でも認められるわけではない。しかし少なくても検討のテーブルに乗ると思うと社員は前向きになれる。

古河電工は新規事業の開発にも力を入れている。例えば光ファイバーのレーザー光技術を応用した加工用レーザー「インフラレーザー」は、金属に照射すると表面を傷つけることなくさびを落とせる。橋や道路、電車や船体などのインフラのメンテナンス需要にマッチする新規事業だ。

興味深いのは、データセンターとはほぼ関連がないことだろう。特定領域への選択と集中が始まると、ほかの部門は委縮するものだ。しかし森平は「関連の薄い事業も、パーパスに沿って収益が上がるものであれば、将来に向けて自信をもって取り組んでほしい」とオープンな構えで、実際に積極的に投資もしている。

トップとして方向性を示しつつ、サーバント型でボトムのモチベーションを最大限引き出す。この二刀流が森平流である。


もりだいら・ひでや◎1965年、群馬県生まれ。90年東北大学大学院理学研究科地学専攻を修了。同年4月古河電気工業入社。2020年執行役員情報通信ソリューション統括部門ファイバー・ケーブル事業部門長、22年取締役兼執行役員常務情報ソリューション統括部門長を経て、23年より現職。

文=村上 敬 写真=苅部太郎

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