幅広い事業でポートフォリオを組めば、企業はリスク分散などのメリットを期待できる。ただ、その一方で、事業が多岐にわたるほど経営者は投資家などから次の質問を浴びせられることになる。
「いったい何の会社ですか?」
2023年に古河電気工業(以下古河電工)の社長に就任した森平英也も、この問いに頭を悩ませ続けてきた。古河電工の事業は確かに幅広い。ルーツは電線を中心とした伸銅品だが、そこから派生して電装エレクトロニクス、光ケーブルなどのインフラ、半導体部材などの機能製品といったセグメントで事業を展開。それらを積み上げて日本を代表するグループ企業を形成しているが、全容をIRなどで説明するのに四苦八苦していた。
状況が変わったのは約1年前。同社は長い間PBR1倍割れの評価に苦しんできた。しかし25年3月期の第2四半期の業績が好調で、市場はそれを高評価。PBR1倍台になった。
「足元の状況を見ると、かなりの部分がデータセンターがらみで伸びていました。データセンターをつなぐ光ケーブルや、そこに電力を供給する送電網、発熱を抑える冷却デバイス。これらがデータセンターの活況に引っ張られていることが鮮明になったのです。『古河電工はデータセンターに強い会社』と打ち出せるようになったことは大きい。市場でのプレゼンスが高まり、従業員の働きがいにもつながると考えています」
単に説明がしやすくなっただけではない。中核領域を明確にしたことで、データセンター関連事業により強くアクセルを踏めるようになった。
実は古河電工は冷却デバイスでデータセンター需要をいち早くとらえていたものの、光ケーブル事業はテレコム関連の既存客にリソースを割く必要があって後手に回っていた。しかし、方向性が定まったことで追撃の態勢が整ったのだ。
「これまで光ケーブルは日本、北米、南米で地域ごとに展開していました。しかし受注窓口が分かれて地域最適化していたため、こちらのキャパシティを整理しきれずに逃していた部分があった。そこで25年4月に3社を統合して新ブランド「Lightera」を設立しました。統合した効果はさっそく出ています。このセグメントは赤字でしたが、今期は黒字化が見込めます」
方向性を指し示すことはトップの大事な仕事だが、森平がほかにもリーダーとして意識していることがある。サーバントリーダーシップだ。



