経済

2026.01.23 13:00

トランプのグリーンランド戦略が浮き彫りにする、北極圏の覇権争いの新局面

氷に覆われた海を進む大型貨物船(Shutterstock.com)

グリーンランド開発の厳しい現実

北極圏の現状に加えて、グリーンランドには鉱物資源がある。鉄鉱石、銅、亜鉛、黒鉛(グラファイト)、タングステンなどが豊富なのだ。

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だが、真に注目を集めているのはレアアース(希土類)である。戦闘機からスマートフォン、ミサイル誘導システムに至るまで、あらゆるものを動かすのに不可欠な材料だ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、グリーンランドはレアアースの確認埋蔵量で世界8位とされ、探査が進めばさらに順位が上がる可能性もある。

鉱業会社から見ると、これはとてつもなく魅力的だ。しかし実際には、開発は捗らず、資本集約的なものにならざるを得ない。

グリーンランドは米テキサス州の3倍の面積を有するが、信じがたいことに道路は全長100マイル(約160km)もなく、そのうち町と町を結ぶ幹線道路は一本もない。エネルギーインフラは限られ、輸送コストは高い。レアアース鉱床の多くにはウランが随伴しているが、グリーンランド当局は地元住民の反対を受け、2021年にウランを含有する鉱床の採掘を禁止した。

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この点で、グリーンランドをベネズエラと比較するとわかりやすい。前者はレアアース、後者は石油の埋蔵地として注目され、どちらもすぐさま利益を生む未開発の宝の山のように扱われている。だが、実際の開発には数十億ドル規模の資本投入と長い時間を要する。英エネルギー調査会社ウッドマッケンジーによると、グリーンランドでこれまでに採掘された石油・天然ガス探査のための試掘井はわずか25本で、すべて失敗に終わっている

つまり、グリーンランドもベネズエラも、一攫千金の話などではないのである。

中国はグリーンランド進出を試み、失敗した

中国はグリーンランドの戦略的・資源的価値をいち早く認識し、過去10年間にわたり、空港建設、インフラ事業、科学研究などさまざまな手段を通じて足掛かりを築こうと試みてきた。

そして、これらの取り組みのほとんどすべてが、国家安全保障上の理由でデンマークか米国に阻止されてきた。

たとえば2016年、中国の鉱業会社がグリーンランドにある旧米海軍基地施設を買収しようとしたが阻まれた。2年後、グリーンランド自治政府の空港建設・拡張事業をめぐり中国の国有企業である中国交通建設(CCCC)が5億5000万ドル規模のプロジェクトの入札を勝ち取ろうとしたが、ジェームズ・マティス米国防長官(当時)がデンマークに働きかけ、契約は撤回された。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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