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2026.01.27 11:30

人工物不使用の再生医療が創る未来 アカデミアから上場企業経営者へ:サイフューズ 秋枝静香

秋枝静香|サイフューズ代表取締役 

秋枝静香|サイフューズ代表取締役 

現在発売中のForbes JAPAN1月23日発売号の第三特集は、テクノロジー領域で世界を変える女性、ジェンダーマイノリティ30人に注目する「Women In Tech 30 2026」。『Forbes JAPAN』では2024年から同企画を開始し、26年は2回目となる。19人のアドバイザリーボードからの推薦をもとに選出した30 人に光を当て、女性、ジェンダーマイノリティたちのエンパワーメントとともに、同領域における次世代のロールモデルが見つかるような企画にしていくことを目標にしている企画だ。世界的に遅れていると言われるなか、転換期を迎えている日本で躍動し、その主役とも言える活躍をしている30人を紹介する。


指先の神経を切断した人が、自分の細胞からつくられた神経を移植することで、再び感覚を取り戻す──。秋枝静香が代表取締役を務めるサイフューズは、今まで治療が困難だった病気やケガの治療の実現を目指す再生医療ベンチャーだ。患者から採取した細胞を培養し、独自開発したバイオ3Dプリンターで血管や神経といった組織をつくり出す。人工物を一切使わないため、移植後の拒絶反応などのリスクが低い。2010年に設立、22年に東証グロース市場、25年には福岡証券取引所に上場し、その技術は臨床段階にまで進んでいる。

秋枝の出発点は、もともと異なる分野だった。大学院でがん遺伝子の研究に取り組み、九州大学医学部整形外科で再生医療の研究に出合う。その後、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の事業化検証プロジェクトで、骨軟骨再生の研究に従事。この細胞のみからなる組織・臓器の実用化を目指して、サイフューズは設立された。

創業メンバーとして参画した当初は、研究者として奔走する日々だった。しかし、気づけば役割は広がり、18年に代表取締役に就任する。「バトンがまわってきた」と秋枝は言うが、患者に届ける医療を最優先に考え、一歩ずつ進んできた結果だろう。

その姿勢は、事業パートナーとの向き合い方にも表れている。飲料を容器に充填するシステムで国内最大手の澁谷工業とは装置の製造、包装資材メーカーの藤森工業(現ZACROS)とは細胞の培養、産業ガス大手の岩谷産業とは凍結保存と、再生医療製品の開発工程ごとに大手企業と協業。いずれも、何年もかけて関係を構築した末に生まれたパートナーシップだ。共同研究を重ねて互いの考え方を理解しながら、本格的な提携に至っている。

創業から15年を経て、「『社会づくり』にフェーズがシフトしてきている」と秋枝は説明する。羽田空港周辺では、「殿町・羽田再生医療拠点」が稼働し始めた。23年、藤田医科大学が先端医療研究センターを開設。24年には慶應義塾大学が、多摩川を挟んで川崎市殿町に再生医療リサーチセンターを設立した。このエコシステムのなかで協働しながら、サイフューズは自社技術の海外展開やインバウンド患者の受け入れを視野に入れる。

「人と人のつながりをベースに、新しい医療と産業をつくる。それが日本の経済を活性化させ、次世代社会の創出につながていく」。大きな構想を語りながらも、秋枝の歩みに気負いはない。

文=加藤智朗 写真=安島晋作

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