──和光の代表取締社長である庭崎さんにとって、未来を見据えた経営とはどのようなものでしょうか?
庭崎:こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれませんが、和光の社長という役職に関しては、セイコーで楽しく仕事がしたいと続けてきたら経営に携わることになっていた、という感覚です。そんな私にとっての経営は、一時的にバトンをお預かりして、それを次の世代に渡すことだと思っています。
もちろん、毎日の売り上げは気にはなりますが、未来の和光、セイコーというブランドにつなげていきたいという思いが強くあります。流行りの言葉を使ってしまえばサステナブルですが、創業140年以上の企業、ブランドが未来永劫続いていくことを願って経営しています。

村瀬:アーツアンドカルチャーを筆頭に、和光はものづくりや地域価値に目を向けたうえできちんとマネタイズにも向き合っていて、僕は今、日本の小売で最も面白いことをやっていると思っています。それで昨年末の催事も全力で挑んだのですが、実は以前から、「suzusanの描く未来と、和光の描く未来が近しいところにある」と思っていました。
和光は、世界中の人にとって価値のあるオーセンティックなことを発信しているように感じています。例えば夕暮れ時、空の色が変わっていく様は、対立するパレスチ、イスラエル、中国、台湾の人が見ても美しいと思うはず。
こうしたオーセンティックなものをブランドにしようとするのではなく、普遍的な美しさに心惹かれる人の繋がりに目を向ける和光の「目線」に共感をしています。
庭崎:村瀬さんのおっしゃるように目線は近いと感じています。和光は創業時から、人、物を大切に、真面目に仕事をして、相手に求められているところへいかにリーチできるかを考え続けてきました。こうした姿勢があったからこそ、ブランドとして継続できています。
そのためにもセイコーグループでは、つくり手を大切にして、次の世代にいかに繋げていくかということを重視しています。セイコーウオッチの主力ブランド「グランドセイコー」のつくり手は、マイスターになればなるほど後継者を育成しないと評価されないシステムがあります。どれだけものづくりが正確で、早くて、上手くても、次世代の職人を育てないと上へは上がれない。こういうシステムも含めて、いかに後世に技術、文化を伝えていくかも私たちが担うべき責務なのだと。
また和光は、世界中から多くの人が訪れる小売店舗です。物を売るだけではなく、普遍的な美しさに心惹かれる人の繋がりを見る目線のようなものを伝える場所であり続けたいと思っています。


