新たな戦術が戦場に与える影響
これらの問題点にもかかわらず、新たな戦車戦術は短期的にロシア側に成果をもたらすと考えられる。ロシア軍はウクライナ軍の粘り強い防御に対して大幅な前進を達成しようとするなら、装甲車両が喫緊に必要になる。およそ1000kmにおよぶ戦線で、ロシア軍はポクロウシクや同じくドネツク州のコスチャンティニウカ、チャシウヤル、トレツクといった戦略拠点を制圧するため攻勢をかけてきたが、甚大な損害を出しながら前進は限定的なものにとどまっている。
下車歩兵による突撃は、ウクライナ軍の防御線への限定的な浸透には成功しているものの、占領した陣地を保持するのに必要な火力が足りない場合が多い。新たな戦車展開戦術は、この不足を補う追加的な火力を提供し、下車部隊がより深く浸透し、奪った陣地を保持できるようにする可能性がある。
より広い視点で見れば、この戦術は膠着状態が続く現状を一時的にロシアを有利にする方向に揺さぶる要因をもたらす。戦車の再投入は、この1年ほど戦場であまり見られなくなっていた主要な兵器システムを、攻撃的な形で前線に戻す動きになる。
とはいえ、ウクライナ軍はこれまでと同様、ロシア軍の戦術の変更に迅速に適応し、戦況は再び膠着状態に戻るだろう。この適応でもドローンが中心的な役割を果たすとみられる。ウクライナ軍の自爆ドローンや爆撃ドローンは、より高度な探知・照準能力を取り入れ、戦車自体のみならず、そのディーゼル燃料の補給も優先的に狙う可能性が高い。ウクライナ軍はさらに、対戦車地雷や対戦車壕を含め、ロシア軍の接近経路で各種障害物の使用も増やすことが見込まれる。
ロシア軍の新たな戦術は短期的には成果をもたらす可能性があるものの、持続的な作戦上の成功につながりそうにはない。和平が視野に入りつつあるなか、ロシアは戦場での長期的な成果に対する関心が低下している可能性もある。さらに、ロシア側が戦車を再び戦闘に投入することには、ロシア製装甲車両の有効性に関する国際的な評価を挽回するという別の目的もあるのかもしれない。その評価はこの戦争で著しく損なわれており、複数の国がロシアからの装甲車両の調達から手を引いている。
ロシア軍の新たな戦車戦術は、ドローンに支配された戦場への適応だけでなく、その適応の限界も示している。それは一時的にはロシア軍の攻勢能力を向上させるかもしれないが、探知や通信、兵站面の恒常的な脆弱性を踏まえると、戦争の均衡を決定的に変えるものにはならないだろう。


