「適度な飲酒は有益」とする先行研究の欠陥
米医学誌「ニューイングランド医学紀要(NEJM)」に1997年に掲載された先行研究では、適度な飲酒が心臓病の予防に役立ち、長寿につながる可能性が示唆されていた。だが、過去の多くの研究と同様、この研究にも設計上の欠陥があり、結論の妥当性に疑問が投げかけられるようになった。例えば、複数の研究では、現在の飲酒行動に基づいて健康状態が比較された。その中で、「禁酒者」の中には過去に重度の飲酒歴があったが、これが考慮されていなかったため、現在の健康状態を比較すると、適度な飲酒者は禁酒者より健康に見える事態が生じたのだ。
実際、医学誌「米医師会紀要(JAMA)」に掲載された37万1000人以上を対象にした最近の大規模な研究では、飲酒量に関係なく、アルコール摂取と高血圧や心臓病との間に関連性が認められた。最近発表された論文の大半は、アルコールが心臓に保護効果をもたらすと主張してきた先行研究に異議を唱えている。
がんや心臓病以外の健康への影響
アルコールは、体のほぼ全ての部分に影響を与える可能性がある。アルコールは判断力や思考力、学習能力、協調性に悪影響を及ぼすことが分かっている。そのほか、うつ病やストレス、不安を悪化させることもある。また、肝臓病や肝硬変、肝臓がんの主な原因でもある。アルコールは体内で慢性炎症を引き起こすことも知られており、その結果、免疫機能が損なわれ、感染症と戦う体の能力が低下することもある。
アルコールに健康上の利点はあるのか?
ブドウに含まれる抗酸化物質など、アルコール飲料の成分の一部には健康に良い効果があるものの、アルコール自体には身体に何ら有益な作用をもたらさないようだ。実際、米公衆衛生協会(APHA)をはじめとする多くの保健機関は、アルコールには健康上の利点はないと明言している。WHOも同様に、いかなる量のアルコール摂取も健康にとって安全ではないと警告している。
結論
アルコールに関する科学的根拠は明らかだ。最初の1杯から、飲酒は私たちの命を危険にさらす。危険度は個人や飲酒の仕方によって異なるが、アルコールには完全に安全だと言える量はない。恐らく、アルコール摂取量を減らすか、あるいは完全にやめることが、私たちの健康にとって最良の選択となるだろう。


