テクノロジー

2015.10.02 14:52

“コアラのような外観”の「グーグルカー」に乗ってみた

ころんとした印象的なフォルムは、「現在の交通システムから十分な恩恵を受けていない人たちに、<br />新たなチャンスを与えたい。」というセルゲイ・ブリン氏の言葉をそのまま体現したかのようだ。<br />(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

ころんとした印象的なフォルムは、「現在の交通システムから十分な恩恵を受けていない人たちに、<br />新たなチャンスを与えたい。」というセルゲイ・ブリン氏の言葉をそのまま体現したかのようだ。<br />(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)


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グーグルは9月29日、同社の自動運転カー(グーグルカー)のメディア向けイベントを開催。開発中のプロトタイプのテスト試乗会を行った。会場となったマウンテンビューのGoogle Xビルには、約20名のプレス関係者が招待された。フォーブスからは女性記者のエレン・ユエが参加。その模様をリポートした。

グーグルカーはこれまでLexusをベースとした無骨な外観の印象が強かったが、当日、記者たちに披露されたのは、カップケーキの上に丸い砂糖菓子を載せたように見える、キュートな外観の車両だった。

当日の案内役を務めたプロジェクト責任者、クリス・アームソン氏は「これは意図的にフレンドリーなデザインにしているんです」と説明した。
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「例えば、真っ黒なSUVが自分の家の近所を走っていたとしたら、どう思うでしょうか? それはかなり違う印象を与えるはずです。この外観にすることで、この新奇なテクノロジーが世間に受け入れられやすいものになることを狙っているのです」

このコアラのようなルックスの車体は、既にサンフランシスコ周辺の公道上でテスト走行を行っている。6月にはベイエリアで、そして9月にはオースティンに複数の車体が投入され、実際に路上を走行した。

グーグルカーの車体上部には、360度の周囲を見渡すセンサーが内蔵されている。これまで120万マイル(約193万キロ)に及ぶ走行実績を持ち、一人の人間が一年に運転するほどの距離を毎週走行しているというグーグルカーは、今では自転車に乗った人物の手信号を理解するし、スクールバスのブレーキランプに反応して、速度を落とす能力もある。

試乗会に先立って行われたディスカッションで、関係者らはお気に入りのエピソードを披露した。グーグルカーは口笛を吹きながら赤信号に突っ込んできた自転車を避けたこともあったし、電動車椅子に載った女性が道路の真ん中のアヒルを追いかけているのを避けたこともあったという。

ディスカッションにはバークレーの調査員やセルゲイ・ブリンの姿もあった。その後、一同はGoogle Xビル屋上の駐車場スペースに移動し、テスト走行を体験した。記者らはペアになってグーグルカーに乗り込んだ。車内にはハンドルやブレーキペダルは無く、前方には小さなスクリーンがあるだけだった。

案内役を務めるグーグルのサラ・ハニンガは、車内から手や足を外に出さないように、また、車内のインテリアの動画撮影は控えるように言った。そして、コンソール中央にある丸いボタンを押すと車は出発した。

車は2分間ほどの間、予めプログラムされたルートを走行した。最大で時速25マイルほどの速度でグーグルカーは走った。まるでディズニーランドの乗り物のような、おだやかな乗り心地だった。

このクルマが一体いつになれば一般消費者の手に届くのかは明かされていない。グーグルが一体どのようなビジネスモデルを考えているのか、保険や安全性、信頼性の担保はどうなるのかといった疑問についても、その答えは用意されていない。

アームソンは個人的に、現在12歳の彼の娘が16歳で運転免許を取得する頃には、このクルマが公開されることを望んでいるという。グーグルは自動車メーカーらと共同でこのプロジェクトを進めたいと考えている、と彼は強調した。しかし、自動車メーカーにしてみれば、グーグルが心変わりして、彼らの競合となる可能性を恐れている。(コアラの外観を持ったクルマは、既に自動車メーカーの脅威なのかもしれないが)

記者の一人は、グーグルカーの技術をオープンソースで公開する可能性はあるかと尋ねた。アーソンは「まだ確定的なことは言えない」とした上で「現状の取り組みは、グーグル独占で行っている」と答えた。

また、実際に市場にデビューした場合、それは自分で所有するクルマになるのか、それともウーバーのようなオンデマンド型の無人カーになるのかという疑問もある。もしも、後者のタイプになるとしたら、グーグルカーは人々がその動きを試しつつ、進化していくものになるのかもしれない。

新会社のアルファベットの設立以降、グーグルの日常業務から離れたセルゲイ・ブリンは、ビジネスというよりもむしろ個人的な動機で、このプロジェクトを運営しているという。

「私はクルマが人々のコミュニティを変える可能性について考えています。現在の交通システムから十分な恩恵を受けていない多くの人たちに、新たなチャンスを与えること。それが現実になる日が近づいていると思うのです。それは本当にわくわくすることです」とブリンは語った。

アルファベットへの再編を果たしたグーグルは、目先の利益を度外視したムーンショットにより多くの時間をさけるし、事を急ぐ必要はない。グーグルカーに関して、現状で唯一明白なのは、そのことだけなのかもしれない。

※試乗会の模様を収録した動画は下記リンクから視聴可能。
http://www.forbes.com/video/4524248663001/

文=エレン・ユエ(Forbes)/ 編集=上田裕資

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