サイエンス

2026.01.24 16:00

恐竜の時代から姿が変わらない、深海のサメ「ラブカ」

「最も古代的な外見の現生脊椎動物」と呼ばれるラブカ(Getty Images)

「最も古代的な外見の現生脊椎動物」と呼ばれるラブカ(Getty Images)

森林が地上の景観をつくり変えるはるか昔、鳥が空を舞うよりも、恐竜が大地を闊歩するよりも前の時代に、サメの一つの系統は、すでに海中生活に適したデザインを極めていた。この系統のほとんどの種はやがて滅びたが、どうにか耐え抜いた種が存在する。この種は今もなお、8000万年前からほとんど変わらない姿で深海を泳いでいる。

その名前はラブカ(学名:Chlamydoselachus anguineus)。英名では「frilled shark(フリルのあるサメ)」または「lizard shark(トカゲザメ)」という。

ヘビのように細長い体、針のような歯、泰然としたスローな動きから、しばしば「最も古代的な外見の現生脊椎動物」と呼ばれるのもうなずける。彼らの姿は、太古の脊椎動物が、この先のさまざまな可能性を試していた時代を想起させる。

ラブカを「生きた化石」と呼ぶのは過度の単純化かもしれないが、ラブカの解剖学的特徴が、樹木や顕花植物、さらには現代の魚類のグループのほとんどさえも存在しなかった時代にさかのぼるものであることは、紛れもない事実だ。

恐竜の時代から泳ぎ続けるサメ

「樹木が生まれる前から」という言い回しは誇張めいて聞こえるかもしれないが、サメに関しては文字通りの意味だ。最古の真の樹木が誕生したのは約3億8500万年前のデボン紀だが、化石証拠によれば、サメはその数千万年前からすでに多様化を果たしていた。最初のサメに似た魚が化石記録に登場するのは、少なくとも4億2000万年前なのだ。

ラブカは、近縁のミナミアフリカラブカとともに、古代からの系統であるラブカ科を構成する現生の種だ。このグループは、極めて古い時代に、現代のサメの祖先から分岐した。

2013年に学術誌『BioMed Research International』に掲載された論文によれば、ラブカを含む系統は、カグラザメ目の初期段階で分岐し、その年代は実に1億1540万年前と推定されている。まさに恐竜の時代に、彼らはサメの進化系統樹の根元に近いところで枝分かれしたのだ。

このように古い起源をもつため、ラブカは、おなじみの他種のサメ、例えばホホジロザメやシュモクザメとは、解剖学的に大きく異なっている。サメに詳しくない人は、ひと目見ただけではサメの一種と認識できないかもしれない。

ラブカは、全長2mに達する細長い体をもち、信じられないくらいゆっくり泳ぐ。ヘビのような体型には理由がある。これは、深海生活への高度な適応の一つなのだ。深海は広大で獲物に乏しいため、エネルギーを効率的に利用することが最優先される。

ラブカは6対の鰓孔(えらあな:えらの後方にある水の排出口)をもち、これらが喉の周囲にフリル状に位置することから、「frilled shark」の英名がついた。サメの現生種の大部分は、鰓孔が5対しかない。6対の鰓孔は、初期のサメの化石以外にはほとんど見られない、古い解剖学的特徴だ。

ラブカの顎の構造も、進化的に見て古い姿を思わせる。現生のサメのほとんどが、噛み付く際に下顎を前方に突き出す能力をもつのに対し、ラブカの下顎はより固定的で、頭骨に埋め込まれている。このような配置は、初期の軟骨魚類のものに似ており、下顎の可動範囲が狭いという欠点をもつ。しかし、ラブカにはこの制約を埋め合わせる別の武器がある──300本もの歯という形で。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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