60階建ての高層ホテルとしてそびえ建ち、周囲のカジノを圧倒する「サーカ・リゾート&カジノ」
フリーモント通りとメインストリートの角にそびえ建つ60階建ての高層ホテル、サーカ・リゾートは、周囲の街並みの中でひときわ背が高く、巨大なクルーズ船が街の中心に停泊しているかのように見える。このエリアでこれほどの高級路線を打ち出した施設は少ないため、周囲のカジノは見劣りしてしまう。
ボイド・ゲーミング傘下のフリーモント・カジノは、ネオンや内装に往年のラスベガスらしさは残るものの、スポーツブック(スポーツへの賭けを行うスペース)は小規模で、スロットマシンも古い機種が目立つ。訪れるのは長年通い続けている常連客が中心で、若い客の姿はあまり見られない。ティルマン・フェルティッタが所有するゴールデン・ナゲットも老舗らしい安心感はあるが、内装や雰囲気は古びている。ビニオンズは、世界最大のポーカー大会「ワールドシリーズ・オブ・ポーカー」を1970年に創設したカジノだ。その名はカジノ史に刻まれているが、施設自体には長年手が入っていないように見える。
世界最大級のスポーツブックと巨大プール「スタジアム・スイム」を整備
その中でサーカ・リゾートだけは明らかに別物だ。3フロアに広がる世界最大級のスポーツブックには、映画館のような座席が並び、巨大スクリーンでは最大19試合の映像とオッズを同時に映し出せる。屋外には、冬でも摂氏約37度に保たれる巨大プール「スタジアム・スイム」が設けられ、高さ約44メートルのスクリーンがそびえ立つ。人々はただその場所を見るためだけにやってくる。スティーブンスは、それを「アクア・シアター」と呼び、「クソ(fucking)世界史上最高のプール」を作ったと信じている。
この1年、海外からの観光客が減った影響で、ストリップ地区のホテルやカジノは総じて苦戦してきた。一方、サーカ・リゾートは、成人限定にした点も、落ち着いた雰囲気を求める顧客には好評で、ダウンタウンの客層を的確につかんだ。サーカの年間のゲーミング収入は、ダウンタウン全体のカジノ収益のおよそ35%の推定約2億8000万ドル(約434億円)に達している。この額は、フリーモント通りにあるボイド傘下の3施設の合計を上回る。
2020年10月の開業以降、ダウンタウン全体のゲーミング収入は約40%増加した。成長のすべてをサーカの功績とすることはできないが、コロナ禍で勢いを失っていたフリーモント通りに、人の流れを呼び戻すきっかけになったことは確かだ。
今や業界の内外で知られる存在になったスティーブンス率いるサーカには、ヘッジファンド界のスティーブ・コーエンのようなビリオネアが訪れ、2025年1月には就任直後のトランプ大統領も姿を見せていた。一方2023年には、電話でスティーブンスになりすました詐欺師が従業員をだまし、サーカの金庫から110万ドル(約1億7000万円)を持ち出させる事件も起きた(犯人はその後逮捕された)。
規則に縛られない姿勢で罰金を受けるも、最後のカジノ王と評される
スティーブンスには、規則に縛られすぎない一面もある。過去には、必要な手続きを経ずにゴールデン・ゲートとザ・Dで2人の客に合計2万5000ドル(約388万円)分のチップを渡したとして、ネバダ州のゲーミング当局から25万ドル(約3900万円)の罰金を科されたことがある(本人は不正行為を否定した)。
「彼は、かつての大物がやってきたことを、より大きなスケールで再現した」と、ネバダ大学ラスベガス校で歴史を教えるマイク・グリーンは語る。「シェルドン・アデルソンは亡くなり、スティーブ・ウィンは経営の第一線を退いた。フィル・ラフィンは、現在も巨大カジノを所有しているが、かつてのカジノ王とは立ち位置が異なる。そう考えると、スティーブンスは最後のカジノ王かもしれない」。
もっとも、本人はその見方を笑って受け流し、「彼らは本当の大物だ。私はただバーの隅でビールを売っているだけの男だ」と語る。


