経済・社会

2026.01.21 15:15

ダボス・リポート2026 (1)3000人が集う「ダボス会議」、真の価値が試される5日間が始まった

繰り広げられるのは「対話」か、それとも対立に向けた「宣戦布告」なのか━━。

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第56回世界経済フォーラム年次総会(通称「ダボス会議」)が2026年1月19日にスイスのダボス・クロスタースで始まった。「この数十年のなかで最も複雑な地政学的状況下で開催される」(世界経済フォーラム)今回の会合には、米ドナルド・トランプ大統領やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領など約65人の国家元首や政府首脳を含め、130カ国以上から約3000人が出席する予定だ。

今年のダボスの主役は、なんといってもトランプ大統領だろう。デンマーク自治領グリーンランドの領有権獲得に意欲を見せるなか、過去最大規模の米国代表団を率いてダボスに降り立つ見通しだ。21日に予定されている演説で、米大統領は何を話すのか。トランプ大統領の発言に、欧州をはじめ世界各国はどう反応するのか。「対話の力(A Spirit of Dialogue)」をテーマに掲げる今年のダボスには、いつにも増して緊迫した空気が漂う。

年次総会に先駆けて世界経済フォーラムが発表した『グローバルリスク報告書2026年版』は、「地経学上の対立」を最大のリスクに挙げた。本調査の回答者の半数が、今後2年間のグローバル情勢は「激変」または不穏な状況になると予測している。

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世界は今、単なる交渉や演説ではない「対話の力」を渇望している。多くのリーダーが物理的に一堂に会したからといって、本質的な対話が行われるかどうかは別の話だ。トランプ大統領の言動が場を支配しかねない状況下において、既存の枠組みを打ち破り、対話を通じてよりよい未来を共に創る力を引き出すことができるか。「ダボス会議」の真の価値が試される5日間になる。

「私たちは2050年を迎えることができるのか?」

メディアの見出しやSNSを躍らせるのは、いつだって「対立」を煽る政治家たちの大きな声だ。華やかなメインステージでの政治的な駆け引きは、確かに目を引く。しかしその足元では、世界をよりよい場所にしようと知恵を絞る企業人や専門家たちが地道な対話を紡いでいる。

政治的な劇場の最前列ではなく、実務者たちの本音の対話に耳を澄ませたい――。開催初日の夜、華やかなオープニングコンサートの会場を離れ、私は凍てつくダボスの街に出た。向かった先は、ダボス期間中に現地の学校の講堂で開催される公開イベント「オープン・フォーラム」だ。世界経済フォーラムが03年から始めた取り組みで、市民を含め、席があれば誰でも無料で参加できる。

開始の30分前にもかかわらず、入り口には50人近い人々が列をなしていた。会場担当者に聞くと、すでに200人近い人たちが入場済みだという。2年前に参加した朝のセッションでは学生の姿が目立ったが、今回はビジネスパーソンや地域住民と見られる人たちが多い印象だ。

初日のオープン・フォーラムのテーマは「私たちが望む2050年とは?」。列に並びながら、自然と会話が生まれた。前に並んでいたのは、スタートアップのリーダーとプエルトリコ出身のアメリカ人。後ろにいたのはウクライナ出身の男性だった。話題はAI、トランプ大統領、そして地政学的リスクへと続く。

「ここは前向きな人たちの集まりだね。未来に目が向いているのだから」。キーウ出身の男性が、にこやかにそう呟いた。未来に目を向けたとき、私たちは今なにを考え、どう行動すべきなのか。異なる背景を持つ人々が、同じ問いを抱きながら会場の席に着いた。
 

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文/瀬戸久美子 写真/世界経済フォーラム

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