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2026.01.22 10:30

CESから消えた「SONY」──会場の外で見えた“二つの身体”

CES 2026はラスベガス・コンベンションセンターで開催された(Tayfun Coskun/Anadolu via Getty Images)

“シネマ品質”を実装できるソニーの強み

これらは“バーチャルプロダクション”を、シネマ品質レベルで実現するために作られたものだが、品質基準が高いため産業レベルでの応用も可能だという。

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例えば自動車業界では、当然ながら自社製品の3Dデータは部品レベルで保有している。しかし、競合他社の車を購入して分析する場合、CADデータが存在しないため手作業での計測を行なっていたという。

しかし、XYNのスキャン技術を使えば、複雑な形状もはるかに短時間でデータ化できる。また、衝突試験で「ぐしゃぐしゃに潰れた車」など、モデリング不可能な状態を3Dデータとして保存し、研究に活かすニーズも先行して活用している顧客も生まれ始めている。

また、社会的な実装を考えるなら、地方創生においても大きな武器になるだろう。10年に一度しか開帳されない秘仏や、ドローン撮影に制限がある国宝級の景観。これらを高精細にデジタルアーカイブ化し、観光資源として活用するといったことも、XYNのクオリティなら十分に射程圏に入る。

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ソニーの強みは、シネマ品質の制作から、その編集(XYN)、表示(Crystal LEDやSRD)、そしてソニー・ピクチャーズという出口までを垂直統合している点にある。そうした垂直統合の中でニーズが集まり、ワークフロー全体を3D化する際の“引っかかり”をなくしている。

その答えとして、一度、3Dキャプチャという形で撮影を行えば、“再利用可能なアセット”となり、あらゆる制作シーンで再活用できるようになる。そのための道具を、一気にデモンストレーションしたのがCESでのソニーの展示だった。

“SONY”と“SHM”が描くソニーの輪郭

LVCCから「SONY」のロゴが消えたことは、後退なのだろうか? むしろ、ソニーが何を正面に据えたのかを示すサインに見える。

SHMはAFEELAという“ボディ”を通じて、ユーザーが移動する物理空間への介入を試みていた。ソニーは空間キャプチャと制作ツールを通じて、現実世界を3Dデータとして記述し、編集可能なものへと変えようとしている。両者に共通しているのは、現実世界とデジタル世界の境界を、どう溶かすかだろう。それは数年前、現在は会長となっている吉田憲一郎会長が描いたビジョンそのものだ。

SONYロゴが会場から消えたことは、決して後退とは思わない。単に“SONY”が“CES”の目指す方向とは異なる方向に歩んだからなのだろう。それがソニーの意図している戦略の結果ならば、(寂しさを感じるのは)視線の置き場所をこちらが見誤っていただけだ。

そして、その見誤りに気づいたことこそが、このCESの収穫だったと言えるのかもしれない。

編集=安井克至

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