テクノロジー

2026.01.24 09:00

テスラを出し抜いたボストン・ダイナミクス──人型ロボ「Atlas」が工場の現場を闊歩する

CES2026でのAtlas(Tayfun Coskun/Anadolu via Getty Images)

CES2026でのAtlas(Tayfun Coskun/Anadolu via Getty Images)

2週間前のCES 2026で、1台のロボットがラスベガスのステージに歩いて現れた。観客に手を振った。人間にはできない動きを見せた。脚はその場に据えたまま胴体だけが180度回転し、膝を逆向きに曲げるようにして歩き去ったのだ。観客が目撃したのは、試作品の曲芸ではない。製品の発表である。

ボストン・ダイナミクスがテスラより先に製造現場へ──投資家が注目すべきはロボットではなく部品である理由

Atlas(アトラス)はもはや研究プロジェクトではない。量産に入り、2026年分のユニットはすでにヒョンデ(現代)の工場とグーグル・ディープマインド向けに全量が確保されている。CNETグループはCESで同機を「Best Robot」に選び、審査員は「製品版は今年からヒョンデの製造施設に配備できる段階にあり、次にあなたが買う車づくりに関わっているかもしれない」と述べた。

人型ロボ「Atlas」が他と異なる理由

多くの人型ロボットは人間の動きを真似ようとする。Atlasは人間を模倣するのではなく、人間の制約を超えるように設計された。

仕様がそれを裏づける。身長6.2フィート(約1.89m)、体重198ポンド(約90kg)。腕を伸ばすと到達範囲は7.5フィート(約2.29m)になる。瞬間的には110ポンド(約50kg)を持ち上げ、連続作業では66ポンド(約30kg)を扱える。56自由度を備え、頭部・胴体・手・指を自在に回転できるため、人間より効率よく物を扱える。向きを変えるために体ごと回り込む必要もない。人間の身体構造に由来する物理的制約を引きずらないからだ。

このロボットは2つのバッテリーパックで動作し、約4時間の稼働時間を確保している。電力が低下しても、人間がバッテリーを交換するのを待って停止することはない。自律的に充電ステーションへ移動し、3分でパックを交換して作業に戻る。Boston Dynamicsによると、充電は90分で済むため、Atlasは最小限のダウンタイムで24時間稼働が可能である。

また、人間との共有作業空間での使用が認定された初のヒューマノイドでもある。360度カメラシステムが接近する人間を検知し、自動的に一時停止する。設計にはパッドが施され、挟み込みが起きやすい箇所を最小限に抑えている。Boston Dynamicsはこれを「エンタープライズグレード」(企業向け品質)と呼ぶが、これは科学実験には使われない表現である。

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翻訳=酒匂寛

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