テクノロジー

2026.01.24 09:00

テスラを出し抜いたボストン・ダイナミクス──人型ロボ「Atlas」が工場の現場を闊歩する

CES2026でのAtlas(Tayfun Coskun/Anadolu via Getty Images)

誰も語らないソフトウェアの優位性

CESでボストン・ダイナミクスは、競争環境を変えうるグーグル・ディープマインドとの提携を発表した。

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ディープマインドは、AI基盤モデル「Gemini Robotics」をアトラスに統合する。ディープマインドでロボティクス担当シニアディレクターを務めるカロリーナ・パラダは、これによりロボットが「私たちと同じように物理世界を理解する」能力を得ると述べた。特定の作業を個別にプログラムするのではなく、アトラスは人の実演から学び、新しい状況にも応用できるようになる。

この意味は、複数台をまとめて配備する際にとりわけ大きい。ボストン・ダイナミクスのフリート管理ソフト「Orbit」はすでに、1台のアトラスが獲得した技能を、企業が保有する他の全ユニットへ共有できるようにしている。研究室のロボットが一晩で新たな組立作業を習得すれば、工場フロアの全ユニットが翌朝にはそれを実行できる。ディープマインドとの提携はこれをさらに加速する。パラダによれば、Atlasは人の実演を最少50回行うだけで、新しい現場のワークフローを学べる可能性があるという。

これは、テスラの自動運転ソフト「Full Self Driving」を肉体労働に当てはめたようなモデルだ。1台の車が新しい障害物の回避方法を学べば、フリート全体に更新が行き渡る。Atlasも同じ仕組みで動く。違いは、ボストン・ダイナミクスが今すでに出荷されている一方で、テスラの人型ロボット「Optimus」(オプティマス)は社内テスト段階にとどまり、外部顧客が確定したという情報がない点にある。

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iPhoneとの類比は現実味がある

2007年の初代iPhoneを思い出してほしい。マルチタッチディスプレイはガジェットに見えたが、物理ボタンそのものを不要にしたと気づいた瞬間、その意味が変わった。あのインターフェースは小さな改良ではなく、構造そのものの転換だった。

Atlasは産業労働において同様の転換を示している。1人の労働者を置き換えるための設計ではない。疲労、けがのリスク、温度への弱さ、休憩の必要といった、人間の仕事を規定してきた物理的制約を取り払うための設計である。

Atlasは華氏マイナス4〜104度(約マイナス20〜40℃)の範囲でフル能力を維持して稼働できる。IP67等級で、粉じんの侵入を防ぎ、一定条件の水没にも耐える防水性能を備える。Orbitを通じて既存の製造実行システム(MES)や倉庫管理システム(WMS)と直接統合できる。ボストン・ダイナミクスは、多くの作業を1日未満で訓練できるとしている。

ヒョンデは、米ジョージア州サバンナのMetaplant America(メタプラント・アメリカ)施設にAtlasを2028年までに配備し、まずは部品を組立順に並べる作業(parts sequencing)から始める計画だ。2030年までに、用途は部品の組立作業や、反復動作と重量物の取り扱いを伴う作業へ拡大する見込みである。Boston Dynamicsの親会社であるヒョンデはまた、Atlasを年間3万台生産できるロボット工場を建設する計画も発表した。

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翻訳=酒匂寛

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