WOMEN

2026.01.24 13:30

「ごちゃまぜ」が拓く創造性の民主化:steAm中島さち子

中島さち子|steAm代表取締役(CEO)/音楽家/数学研究者

中島さち子|steAm代表取締役(CEO)/音楽家/数学研究者

現在発売中のForbes JAPAN1月23日発売号の第三特集は、テクノロジー領域で世界を変える女性、ジェンダーマイノリティ30人に注目する「Women In Tech 30 2026」。『Forbes JAPAN』では2024年から同企画を開始し、26年は2回目となる。19人のアドバイザリーボードからの推薦をもとに選出した30 人に光を当て、女性、ジェンダーマイノリティたちのエンパワーメントとともに、同領域における次世代のロールモデルが見つかるような企画にしていくことを目標にしている企画だ。世界的に遅れていると言われるなか、転換期を迎えている日本で躍動し、その主役とも言える活躍をしている30人を紹介する。

数学研究者、音楽家、教育者、起業家、そして母親──。数々の顔をもち、万博プロデューサーも務めた中島が今も大切にしていることとは。


盛況のうちに幕を閉じた2025年大阪・関西万博。テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を表現した8つのシグネチャーパビリオンは、どこも多くの人でにぎわった。数学研究者・音楽家の中島さち子がプロデューサーを務めた「いのちの遊び場 クラゲ館」も人気パビリオンのひとつで、自由入館部分の来場者数はのべ約270万人にのぼった。

クラゲ館に大勢が詰めかけた理由のひとつは、自分が「つくる」側に回って楽しめること。中島はコンセプトをこう説明する。「昔の万博はすごい技術が展示され、来場者は与えられたものを見ては『こんな未来が来たらうれしいな』と胸を高鳴らせていました。一方、今はテクノロジーがあふれて、私たちはそれを新しい楽器や絵筆のように使って自ら未来をつくれる時代になった。かたい言葉で言うと、『創造性の民主化』をここでやりたかったんです」

実際、クラゲ館には、テクノロジーを使ってインタラクティブに創造できる展示があふれていた。「ごちゃまぜオーケストラ」は、AR(拡張現実)の技術を活用し、来場者が思い思いにカードをカメラにかざすと音が流れてみんなでセッションができる仕組み。カードは楽器だけでなく、動物の鳴き声や雨、歩く音、くしゃみなど、多様な音が用意されていて、意外な組み合わせで音楽が奏でられていく。

この展示に使われていたテクノロジーは、必ずしも“最先端”のものだけではない。

「今は技術の進歩も速く、すごい技術を見るだけではワクワクしづらい。すごい技術でも、毎回指示に従ってやるだけだとつまらないじゃないですか。プロデューサーとして意識していたのは、揺らぎのある遊びです。同じ操作をしても人によって音が違ったり、横の人と一緒にやったら結果が変わったり。そんな、ものや技術と人間が一緒に未来を創れるような感覚を生み出す、21世紀的な遊びを届けたかった」

中島が「創造性の民主化」を掲げたのは万博からさかのぼること7年前。

STEAM教育──科学、技術、工学・ものづくり、アート・リベラルアーツ、数学の頭文字を組み合わせた造語で、創造的・実践的・横断的な学び──を実践するsteAmを起業した。この活動が経産省の目に留まり、「『未来の教室』とEdTech研究会」に委員として参画。その縁もあり、8人いる万博シグネチャーパ
ビリオンプロデューサーに選ばれた。

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文=村上 敬 写真=安島晋作

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