リーダーシップ

2026.01.21 11:30

現場で優秀な人が出世し無能になる「ピーターの法則」は組織の過ち──仕組みを変え、脱却する方法

Shutterstock.com

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ピーターの法則は1969年に教育者ローレンス・J・ピーターが提唱した概念で、「階層組織では、人は能力の極限まで出世する」というものだ。その論理は単純だ。組織は現職での成功に基づいて人を昇進させ、対応できない役職に到達するまで出世し続ける。結果として、あらゆるポジションがやがて各階層で無能な人間で埋められる。

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この法則は役員会議で引用され、業績評価の面談で持ち出され、組織の核心のように扱われる。だが、誰も口にしないことがある。この法則は問題を完全に誤ってとらえているということだ。

人が無能になることが問題なのではない。組織が間違った理由で人を昇進させ、同じように間違った理由で昇進した人間ばかりで固め、結果として機能不全に陥ることを覆い隠す仕組みを作っていることだ。組織はこのパターンに偶然陥るのではない。意図的に設計し、人を配置し、そこから生まれる凡庸さを隠すための権限構造を丸ごと築き上げる。

これを「ピーターの法則の経済」と呼ぶことができる。マネジメントを能力ではなく報酬として扱う、自己防衛型の制度だ。

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誰も指摘しない人選の問題

私が勤めるGallup(ギャラップ)の最新の調査は、この仕組みがどのように機能しているかを明確に示している。何が評価されて管理する立場になったのかを尋ねたところ、現場の第一線のマネジャーの65%が業績または現場経験年数を理由に挙げた。管理するスキルや経験によって昇進したと答えた人はわずか30%だった。

この結果がどうなるかというと、現場の成果で昇進した人の下でのエンゲージメント率は31%だ。管理能力で昇進した人の下では42%だ。

これは小さな差ではない。構造上の欠陥だ。

私たちは、最も優れた営業担当を営業部門の管理職に昇進させる。最も優れたエンジニアを、エンジニアリング部門のリーダーにする。勤続年数が最長のアナリストを、チームのリーダーにする。毎回、過去の実行力を基準に選び、それが未来の判断力へ変わることを期待する。だが、それはほとんど実現しない。

たとえば、あるリーダーが12年間かけて企業取引を成立させたとしよう。買い手の心理を読み、一連のプロセスを進め、押すべきタイミングと待つべきタイミングを見極める。それは何百回もの交渉で鍛えられたパターン認識だ。そのリーダーは15人のチームを率い、時間の60%をパイプラインレビューと評価調整に費やしている。その人は無能になったのではない。能力が活かされない役割へ移されたのだ。

私は、まさにこのギャップで身動きが取れなくなっているリーダーたちをコーチしてきた。彼らが苦しむのは、能力不足のためではない。組織があることを理由に彼らを昇進させ、その後まったく別のことで評価しているからだ。しかも、その変化が明確に説明されることはない。

だが、選抜の問題は始まりにすぎない。ピーターの法則が長く作用する理由は、最初のミスにあるのではない。組織がそれを維持するために取る行動こそが原因だ。

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翻訳=溝口慈子

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