人工知能(AI)の普及は、数兆ドル(数百兆円)規模のビジネスを生み出している。しかし、AI向けのデータセンター不動産を手がける最大手2社の株価は、市場で出遅れている。なぜこうした事態が起きているのか。そして、彼らが巻き返す余地はどこにあるのかを本稿では考察する。
AIインフラ争奪戦と取り残される「不動産投資信託(REIT)」
AIブームは突如として数百社のユニコーン企業を生み出し、数十人のビリオネアを誕生させ、エヌビディアやブロードコム、グーグル、メタといった上場テック大手の時価総額を合わせて1兆ドル(約158兆円。1ドル=158円換算)以上も押し上げた。AI向けのコンピューティングパワーの需要の高まりは、金融史上でも前例のない規模のインフラ争奪戦を引き起こしている。
メタのマーク・ザッカーバーグCEOは先日、今後10年で数十ギガワット規模のAIインフラを構築し、将来的に「数百ギガワット、あるいはそれ以上」に拡大する計画を明らかにした。1ギガワットあたりの投資が500億ドル(約7.9兆円)とすれば、総投資額は数兆ドル(数百兆円)が見込まれる。
最大手3社の株価下落と、AIインフラの「大家」の苦境
AIインフラ分野がこれほどの好況に沸くのであれば、従来からその基盤を担ってきたデータセンター事業者やその投資を支える不動産投資信託(REIT)が記録的な業績を上げていても不思議ではない。ところが、この分野の最大手のエクイニクス(時価総額780億ドル[約12.3兆円])、デジタル・リアルティ(同550億ドル)、アイアンマウンテン(同270億ドル[約4.3兆円])は、その恩恵を受けていない。過去1年間の株価はそれぞれ13%、11%、16%下落しており、S&P500指数が17%上昇したのとは対照的だ。
これら企業は、いわばAIインフラの「大家」にあたる。土地を取得し、インフラを備えたデータセンターを建設し、それをテック企業に貸し出す。つまり理屈の上では、最も潤っていてよい立場にある。だが、現実はそうなっていない。その背景には、リスクを取りにくい体質や電力供給の制約、そしてより大規模で投機的な資本にアクセスできていないことなど、いくつかの要因が存在する。
半導体への利益集中、開発契約の獲得失敗
専門家の間では現在、「AIによって生まれる経済的利益は、グーグル、ブロードコム、エヌビディアといった企業が手がける半導体が獲得するのであって、『REITのようなデータセンター開発業者には回らない』という見方が広がっている」と、モーニングスターのアナリスト、マーク・ジアレリは指摘する。
2025年に締結されたデータセンター開発契約の上位20件の多くを、エクイニクス、デジタル・リアルティなど既存REITが獲得できていなかった。このことが、これら企業の評価の伸び悩みにつながっていると、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、マイケル・ファンクは指摘する。



