REITという仕組み──構造的な足かせとリスク回避の代償
課題の一端は、REITという仕組みそのものにある。1960年代、一般の個人投資家に不動産投資の門戸を開く目的で設計された米国のREITは、法人税を免除される代わりに、課税所得の90%を配当として株主に支払うことを義務づけられている。2000年前後に登場したデータセンターREITは、その役割を概ね果たし、株価は長らく市場全体の指数とほぼ同じ動きをしてきた。ただ、それはAIと巨大なデータセンターが主役になるまでのことだった。
だが現在、その仕組みが足かせになっている。高額な配当を支払わなければならないため、再投資に回せる資本が限られてしまう。資本力がものを言う業界において、これは致命的だ。その結果、上場REITは、潤沢な資金を持つ競合が掲げるような巨額投資に打って出ることが難しくなる。データセンターを巡る入札競争が激化するなかで、この制約は極めて厳しい。
「REITという立場では、他社がやっているように大胆な賭けに出られない。そのことが足を引っ張っている」と語るのは、米不動産サービス大手JLLでデータセンター市場を統括するアンディ・クベングロスだ。
非上場企業との競争とリスク回避型の株主
エクイニクス、デジタル・リアルティ、アイアンマウンテンは、資金力のある企業が次々と参入してくる競争環境に立ち向かう必要がある。メタのように、自社でデータセンターを建設しつつ他社の施設を活用している企業は、潤沢なキャッシュを生む事業を背景に資金を投じている。また、ヴァンテージやQTSといった非上場のデータセンター事業者は、大手投資会社との提携を強めている。
これに対し、REITは株主の性格上、支出余力が制約される。REITの株主は、テック株に賭ける投資家よりも、年金基金に近いリスク回避型の投資家が多いからだ。
REITの株主は、デフォルトのリスクがある案件に、企業が踏み込むことを望まない。そして現在、データセンターを建設するには、そうしたリスクを取ることを求められるケースが多い。REITの借入倍率は自己資本の5倍未満に抑えられることが一般的だが、非上場企業では10〜15倍に達することも珍しくない。
最大手との取引難とオラクルとの対照的な評価
このような事情から、データセンターREITにとっては、OpenAIのような最大手プレーヤーと取引することが難しくなっている。OpenAIは現在、収益化や資金回収の道筋が見えないまま約1兆4000億ドル(約221.2兆円)の投資をコミットしており、ネオクラウドのコアウィーブも、信用力の低いジャンク債に依存して巨額の資金調達を行っている。
このリスク許容度の違いは、9月のオラクルの決算発表で最も鮮明に示された。同社の収益は、市場予想を下回ったものの、データセンター建設に向けた支出を大幅に増やす見通しを示したところ、株価は38%急騰した。しかし、6月にエクイニクスがアナリスト向け説明会で、売上見通しを引き下げる一方、AI向けデータセンターへの巨額投資を打ち出したところ、同社の株価は2日間で18%急落した。


