音楽を学ぶことは、いまも昔も「技術を積むこと」なのか────。音楽は、長年の鍛錬と専門的な素養を前提とする限られた人のための世界だという常識を、京都芸術大学は疑おうとしている。テクノロジーの進化により、音楽のつくり方も、関わり方も大きく変化した。制作から編集、発信までを個人が担える時代において、音楽はもはや一部の専門家だけのものではない。にもかかわらず、教育の仕組みはその変化に十分に応えられてきたか。
2026年、京都芸術大学は新たに「文化コンテンツ創造学科 音楽コース」を開設する。「音楽を特別な才能を持つ人だけのものにしない、学びを年齢や経験で区切らない」という構想を率いるのが、2025年に学長に就任した佐藤卓氏である(ちなみに副学長は放送作家で脚本家、Forbes JAPANや本誌連載「東京blank物語」でもお馴染みの小山薫堂氏)。
佐藤氏は東京藝術大学デザイン科出身、電通を経て自らのデザイン事務所を設立、「ニッカウヰスキー ピュアモルト」の商品開発や「ロッテ キシリトールガム」、「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、また「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」「全国高等学校野球選手権大会」のシンボルマークデザインなどを手掛けるほか、NHK教育テレビ「デザインあ」総合指導を務めるなど多岐にわたって活躍するデザイナーだ。
その佐藤氏に、なぜいま京都芸術大学に音楽コースを設けるのか、背景と展望を聞いた。
「芸術大学として音楽コースの新設は念願でした」
音楽教育の構想自体は、佐藤氏が2025年4月に学長に就任する以前よりあったが、実現には長い時間を要した。
従来の音楽教育は、クラシック音楽を軸に、高度な専門技術を前提とするものだった。しかしいまや、作曲、編曲、録音、配信といったプロセスは、誰もが自宅で実践できる領域になっている。音楽のつくり方そのものが大きく変わる中で、学びのあり方だけが旧来の枠組みにとどまっていていいのか。その問題意識こそが、今回の音楽コース構想の出発点となった。
「テクノロジーが追いついてきたんです。ようやく“いまの時代の音楽教育”を考えることができるようになった。だからこそ、今やるべきだと。教育の側も、変わらないといけないと感じています」



