現在発売中のForbes JAPAN1月23日発売号の第二特集は、「新たな豊かさ」を生み出し、持続可能な経済成長の新主役とも言える「インパクト・エコノミー」をテーマにした「IMPACT THE NEW CHAPTER Vo.2」。今回、フォーカスするのは、社会課題の解決を成長のエンジンととらえ、持続可能な社会の実現を目指す「インパクトスタートアップ」だ。インパクトスタートアップの「1年間の経営におけるチャレンジ」を表彰する「インパクト・チャレンジ・オブ・イヤー」という新企画を中心に、金融・資本市場、大企業、スタートアップ、官、地域で拡張し、「新章」を歩みはじめた日本のインパクト・エコノミーの新潮流を読み解いていく。
「インパクトチャレンジ・オブ・ザ・イヤー2025」の一社、HAKKI GROUP。18億人へ向けたグローバルサウスを舞台にした「人生を変える挑戦」の可能性とは。
「大きなチャレンジですが、率直な思いとしては『だいぶ遅くなった』というのが一番ですね。実際に、南アフリカもインドも進出から数カ月で単月黒字化できていますから」
グローバルサウスのタクシードライバー向けに金融サービスを展開するHAKKI GROUP代表取締役の小林嶺司はこの1年の挑戦である、南アフリカ、インドへの進出をそう振り返る。同社は2019年3月設立以降、アフリカ・ケニアにて、独自のアルゴリズムを用いた信用スコアリングシステムを構築し、中古車マイクロファイナンス事業を行ってきた。ケニアでGDP(国内総生産)の4割が流通しているといわれる巨大決済アプリ「M-PESA(エムペサ)」の利用履歴と、スマートフォンを用いてタクシーを呼び寄せる配車アプリの行動履歴を解析して、独自に信用評価する仕組みだ。24年には、エストニア発でケニア国内首位の配車アプリ企業Bolt(ボルト)とのパートナーシップも締結し、市場シェア拡大につなげてきた。そして同社は25年4月、シリーズCラウンドで、SMBCベンチャーキャピタル、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズを共同リード投資家として、総額27.1億円の資金調達を行った。累計調達額は49億円にのぼる。
創業の原体験として、学生時代のアフリカ縦断時に経験した「選択肢に恵まれた日本人と、可能性から断絶されているケニア人との差を痛感した」ことと振り返る小林。だからこそ、彼の信念は「人の人生を大きく変えるインパクトを起こせるか」だ。
これまでケニアでは、タクシードライバーが銀行融資の与信のための書類や頭金、担保を準備できず、個人のオーナーから車をレンタルしてのタクシー個人事業が一般的だった。年間40〜50万円にもなるレンタカー代金を払い続けるが、車は自分のものにならず、ガソリン代やレンタカー代を支出した後の手取りから貯金をすることも難しい。同社のマイクロファイナンス事業を利用することで、「月3万9000円というレンタカーを借りるのと同じ金額を支払うだけで3年半後に自分の車になる」と小林は言う。
「『HAKKIがなかったら、俺の人生なかったわ』とケニア人のタクシードライバーに本気で言われるんですよ。間違いなく『人の人生を大きく変えた』と自負しています。例えば、あるタクシードライバーの方は、可処分所得が月4万4592円から同8万4840円へと増加しました。加えて、借入前の貯蓄が3850円だったのに対し、完済後には車が自分のものになることで保有資産が65万円になりましたから」
同社のこれまでの貸出累計は35.1億円で、現在の全顧客が完済に至った場合、約25億3,989万4,249円の資産形成に寄与し、生計に影響を与えた人数はすでに4万6908人にのぼるという。



