3. イカ
イカには、同じ頭足類に含まれるタコと多くの共通点があるが、イカは青い血の生物学をとことんまで極めている。世界最大級の無脊椎動物であるダイオウイカ(学名:Architeuthis dux)や、大型のアメリカオオアカイカ(学名:Dosidicus gigas)などの種が、エネルギーを大量に使うハードなライフスタイルの燃料を得られるのは、ヘモシアニンによるところが大きい。
イカは、昼間は深海の低酸素領域で休息し、夜間は表層へ移動して狩りを行うことが知られている。そのため、ヘモシアニンの酸素結合の仕組みは大きな利点になる。その理由はタコの場合と同じだ。イカは高速で泳ぎ、深いところから浅いところへ急速に移動する。大型サイズの体であっても、活発に代謝する状態を維持している。銅をベースとする血を持つおかげで、イカはこうした活動を維持できる。
『Biophysical Reviews』で発表された2017年の研究によれば、軟体動物におけるヘモシアニンのタンパク質構造は、圧力、温度、酸性度への効率的な適応を可能にしているという。
4. カブトガニ
青い血を持つ動物の中でも、カブトガニ(科名:Limulidae)ほど文化的・科学的な重みを持つものはそうそういないだろう。この「生きた化石」は数億年前から存在し、その間進化的な変化をほとんど見せていない。その主な原因は、銅を豊富に含むその血リンパが、浅い水域や干潟でのライフスタイルを申しぶんなく支えていることにある。
生物学的な魅力のほかに、カブトガニの「青い血」は、医学の面でも計り知れない価値を持つ。カブトガニの血リンパに含まれる変形細胞(アメボサイト:amebocyte)は、細菌のエンドトキシン(内毒素)の存在下では、凝固して塊になる。この特性は長らく、LAL(Limulus amebocyte lysate:リムルス変形細胞溶解物)を試薬とする検査で利用されてきた。ワクチンや注射薬、植込み型医療機器が汚染されていないことを確認するために世界中で用いられている検査だ。


