カブトガニが直面する保全上の危機
数億年にわたり、小惑星衝突や氷河期をものともせず生き続けてきたカブトガニだが、いまや人間活動による大きな脅威に直面している。
北米とアジアの各地で、カブトガニの個体数は急激に減少している。現生4種のうち、アメリカカブトガニ(学名:Limulus polyphemus)はIUCNレッドリストで危急種(VU)に、東アジアに生息するカブトガニ(学名:Tachypleus tridentatus)は絶滅危惧種(EN)に指定されている。残りの2種――ミナミカブトガニ(学名:T. gigas)およびマルオカブトガニ(学名:Carcinoscorpius rotundicauda)――については、残念ながら情報不足のため、現時点では絶滅リスクの評価がなされていない。
カブトガニの減少要因としては、人為的な生息地喪失、汚染、乱獲(魚の飼料および生物医学資源として)が挙げられる。製薬会社は従来から、LAL検査の試薬のため血リンパの一部を採取したあと、カブトガニを放流してきた。しかしいくつかの推定によれば、採血後のカブトガニの死亡率は15~30%に上るという。また、生存個体についても、衰弱のために放卵・放精の成功率が低下しているおそれがある。
こうした理由で、カブトガニに依存する生物医学業界の現状は、昨今の倫理的議論の的となっている。LAL検査が、ワクチンやその他の必須医薬品の安全性を保証し、無数の人命を救ってきたことは事実だが、そのために毎年数十万個体の古代生物を捕獲し続けることが果たして持続可能といえるのかという、重大な問いに直面しているのだ。カブトガニの個体数が減少している今、この問題はますます切迫している。
カブトガニはなぜ重要か
カブトガニの物語は、進化のパラドックスを浮き彫りにしている。私たちは概して進化を、新しい種、新しい形質、新たな適応を生み出す変化のプロセスとして捉えがちだ。
しかしカブトガニは、安定性そのものも、進化的成功の一つの形であることを示している。彼らのボディプラン、免疫系、生態系における役割は、途方もなく長い地質時代を通じて、数々の気候の激変に耐え、頑健さを保ってきた。
とはいえ、どんな生物であっても、系統の長期にわたる存続という地質学的な意味での成功が、急速な人為的環境変化への耐性を授けることはない。これに関しては、カブトガニも例外ではなかった。
カブトガニは今、太古から続く進化の歴史と、最先端の生物医学が交差する岐路に立っている。彼らの「青い血」は文字通り、命を救う医療の質を高めてきた。カブトガニが直面する危機は、以下のような難問を提起する。
・ある生物の系統が古代から続いてきたという事実に、どれだけ価値を置き、尊重すべきなのか?
・固定化された業界の慣習を、私たちはどこまで変える覚悟があるのか?
・人類の健康と生物多様性の両方を尊重する形で、科学を発展させるにはどうすればよいのか?
謙虚に耳を傾けるなら、自然界で最も古く、最も成功したデザインから教訓を学べることを、カブトガニは思い出させてくれる。


