競合他社との過去の法廷闘争と、エピックに対する独占批判の再燃
エピックがこうした主張を行うのは、今回が初めてではない。2024年には、ケアクオリティとは別の仲介事業者であるParticle Health(パーティクル・ヘルス)がエピックを提訴し、同社が「独占的な立場を利用して競争を不当に排除している」と訴えた。訴状では、ケアクオリティを通じたエピックの電子カルテへのアクセスを一時的に遮断したことなどが、「不当な競争排除に当たる」と主張していた。
これに対しエピックは、現在ヘルス・ゴリラに向けて行っているのと同様の非難を、パーティクル・ヘルスに向けていた。すなわち、治療目的を装うことで、第三者が患者記録を取得できる状態を許していたという主張だ。パーティクル・ヘルスとの法廷闘争は現在も続いており、連邦地裁の判事は9月、パーティクル・ヘルスの主張の一部を退けた一方で、訴訟そのものは継続を認めた。これについてパーティクル・ヘルスのCEO、ジェイソン・プレスティナリオは、「より良い患者ケアと、患者自身による医療情報の管理を実現するための、大きな勝利への1歩だ」と述べた。エピック側も、「残る主張についての証拠を、今後の裁判で示したい」とコメントしている。
エピックは、電子カルテ業界における支配的な地位をめぐり、これまでも厳しい目を向けられてきた。2024年の売上高が57億ドル(約901億円)に達した非上場企業の同社は、調査会社KLAS Researchによると、米国の病院の約42%で利用されている。同社の最大の競合であるオラクル・ヘルスのシェアは約22.9%にとどまる。なお、エピック創業者兼CEOのジュディ・フォークナーは米国で最も成功した女性起業家の1人で、推定保有資産が78億ドル(約1.2兆円。1ドル=128円換算)に上る。
ヘルス・ゴリラは、同社を相手取る訴訟への反論の中で、エピックに対する独占禁止法上の批判を持ち出した。同社は声明で、「これは、競争を制限し、医療データへのアクセスを妨げるエピックの排他的な行為の新たな事例だ。こうした行動は、医療情報の交換をめぐって、業界関係者や政府関係者からこれまでも指摘されてきた、エピックの独占的慣行に対する、より広範で継続的な懸念を反映している」と述べた。
法廷闘争が政府のルールに及ぼす、広範な影響と規制の強化
一方、エピックとパーティクル・ヘルスの法廷闘争は、すでに広範な影響を及ぼしている。パーティクル・ヘルスが訴訟を起こした後、ケアクオリティに代わる仕組みとして将来的な役割を担うことを想定した米政府の類似システムでは、患者が自身のデータにアクセスしやすくする規則が導入された。また、「治療」の定義も見直され、医療事業者以外が患者記録を取得することは、事実上、より困難になった。
審査体制の改革、政府主導システムへの移行が進む可能性
エピックの狙い通りに事が運べば、今回の新たな訴訟は、同様に大きな影響力を持つ可能性がある。ケアクオリティの審査体制の改革や、患者が自らのデータの行方を追跡できるようにするための改革を促す契機にもなるかもしれない。「これはまさに今、問われていることだ。不正を防ぐためには進化が必要だ」とHTDヘルスのキーラーは述べている。
仮にケアクオリティでの改革が難航した場合、改革の焦点は、2023年に本格稼働した政府主導の仕組み「TEFCA(Trusted Exchange Framework and Common Agreement)」に移る可能性もある。エピックの訴訟について匿名を条件に語ったケアクオリティの参加メンバーは、「これは照明弾のようなものだ。警告信号だと私は見ている」と語る。「彼らが警鐘を鳴らしている理由は、政府にTEFCAへもっと注意を向けさせ、ケアクオリティと同じ失敗を繰り返させないためだと思う」とこの人物は語った。


