北米

2026.01.21 15:00

患者の医療データを「無許可」で収益化、悪質事業者の実態が米訴訟で明るみに

Epic SystemsのCEO、ジュディ・フォークナー(Photo by Taylor Hill/Getty Images)

相互運用性(インターオペラビリティ)がもたらす恩恵と、複雑なシステムが生んだ不正の温床

医療事業者同士が、患者データを共有できること自体は、総じて見れば有益だ。かつては、アレルギーや診断内容、検査結果を別の医療機関に伝えるため、患者自らが各社の窓口を回る必要があった。今ではそうした時代はほぼ終わり、「相互運用性(インターオペラビリティ)」の仕組みで、医師のシステム同士がデジタルで容易に記録をやり取りできるようになっている。

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医療データ基盤を手がけるMetriportの共同創業者兼CEO、ディマ・ゴンチャロフは、「データの相互運用性は、間違いなく全体としてプラスだ」と語る。「がんや慢性疾患を抱える患者が、分厚い医療記録のファイルを持って医療機関を渡り歩かずに済むのは、この仕組みがあるからだ。適切な治療につながるという点でも、患者にとって大きな意味がある」。

エピックの創業者フォークナーも、同社が数十年にわたる相互運用性の改革を後押ししてきたと語っている。しかし、こうした変革が進む一方で、エピックの訴訟で指摘されたような不正が起こり得る、複雑な仕組みが生まれたのも事実だ。医療機関だけでなく、第三者も患者データを請求できる構造になっているからだ。

監視体制が不十分なシステム「Carequality」と、利益相反する“ゲートキーパー”

その代表例が、「Carequality(ケアクオリティ)」というシステムだ。2014年に立ち上げられた全米規模の非営利エコシステムであるケアクオリティは現在、医療情報ネットワーク間でデータをやり取りする最も一般的な仕組みになっており、米国の病院の約70%に利用されている。エピックが訴状で主張する一連の不正行為は、すべてこのケアクオリティを通じて行われたとされる(ケアクオリティはこの訴訟の被告ではないが、訴状全体で繰り返し言及されている)。

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ケアクオリティは、自社のシステムを通じてやり取りされる医療記録が月間12億件を超えると述べているが、記録の請求が正当なものかを完全に監視可能な体制を持たず、スタッフは10人にも満たないという。そこでケアクオリティは自ら精査を行うのではなく、その役割を外部に委ねている。たとえばヘルス・ゴリラのような仲介事業者がその“外部”にあたり、患者記録を請求する組織に正当な治療目的があるかどうかを確認しているわけだ。患者データはこうした仲介事業者を“ゲートキーパー”として経由し流れる仕組みだが、インセンティブ構造は複雑だ。ヘルス・ゴリラのような企業にとって、データへのアクセスの拒否は、顧客を失うことにつながる。

しかもケアクオリティは、不審な動きが報告された場合でも、ゲートキーパーたる仲介事業者の仕事を検証する法的義務を負わされていない。匿名を条件に取材に応じたケアクオリティの関係者は、治療とは関係のない業者が照会をかけていると経営陣に訴えるケースもあったが、調査を拒まれたと語った。「今回の訴訟は驚きではない。被告に名前が挙がった企業は、いずれも皆が噂していた企業だ」とその関係者は述べている。

これに対しケアクオリティは「当組織は患者のセンシティブな情報を守ることに尽力している」とフォーブスへの声明で述べ、「ゲートキーパー(仲介事業者)は、接続先を監督し、規則の順守を確認する責任を負ってきた」と説明した。

次ページ > エピックが把握した不正行為の範囲を超えて、潜在的なデータ流出が広がる懸念

翻訳=上田裕資

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