ブラジルで拡大する存在感
新興市場では現在、ブラジルがペイパルにとって最も重要だ。過去2年、ラテンアメリカ最大の同国で複数のM&A案件に関与してきた。最初の案件は2024年8月で、ペイパルのベンチャー部門が投資家グループに加わり、ブラジルの決済プロバイダーUme(ウメ)のシリーズA資金調達ラウンドに1500万ドル(約23億6800万円)を投資した。
Umeに投資したのは、ブラジルで拡大するBNPL市場で同社が強い立ち位置を取るためである。ブラジルの信用情報機関Serasa Experian(セラーザ・エクスペリアン)によれば、ブラジルの消費者の約71%が日常的に分割払いで買い物をしている。Umeは、国内6000の加盟店ネットワークを通じて消費者向けの与信商品を提供し、22万人超の消費者にリーチしている。さらに、ブラジルの決済インフラPix(ピックス)上での展開も拡大している。
月間ユーザー数が1億人を超えるPixは、ブラジルで最も使われる決済インフラになった。「国が整備したPixの決済インフラ上に自社の仕組みを構築することで、Umeは新たな加盟店と消費者を即座に取り込み、迅速に規模を拡大できます」。ペイパル・ベンチャーズの投資パートナーであるイアン・コックスは、ニュースリリースでこう述べた。
同じくPixの巨大な決済インフラを見据え、ペイパルは2025年半ばにブラジルで加盟店向け決済処理サービスを開始した。これにより加盟店の決済を自社で直接処理でき、取引手数料を下げ、入金(精算)を早められる。同社はPixを競合ではなく補完的な存在と位置づけ、統合を進めている。ブラジルの利用者に迅速で安全、低コストの取引を提供するためだ。
中東・アフリカでの国際展開
ブラジルでの存在感は大きい一方で、中東・アフリカ(MEA)では足場がはるかに小さい。だがペイパルは、フィンテック各社がグローバル展開の重点地域として注目し始めている同地域に1億ドル(約158億円)を投じ、状況を変える考えだ。
ペイパルはMEA地域について、幅広い目標を掲げる。「このコミットメントは、中東・アフリカにおけるペイパルの存在感を拡大するという私たちの取り組みを示すものです。現地企業とグローバル市場のつながりを強めることにも注力しています」。ペイパル中東・アフリカの上級副社長(地域統括責任者兼ゼネラルマネジャー)であるオットー・ウィリアムズは声明でこう述べた。「この地域での事業基盤を広げ、何百万人もの消費者と企業が、成長に必要なデジタルサービスをより多く利用できるようにすることに注力しています」。
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、MEAが今後数年で世界で最も急成長するフィンテック地域になると見込む。フィンテックの純収益は2028年まで年率35%で伸び、世界平均の15%を上回る見通しだ。その理由は主に、GCC(湾岸協力会議=中東の産油国6カ国による協力機構)では銀行部門の収益に占めるフィンテックの割合がわずか1〜2%にとどまっており、米国や英国の3〜5%と比べて伸びしろが大きいためだ。
湾岸諸国は、ペイパルのMEA拡大で重要になる。2025年4月、同社はドバイに初の地域拠点を開設した。サウジアラビア拠点のフィンテック新興企業Tabby(タビー)にも投資している。


