かつてペイパル(PayPal)は、イーベイ(eBay)との提携によって世界有数のデジタル決済企業として君臨していた。だが独立企業としてスピンオフして以降の10年間で競争は激化し、特に直近5年は熾烈さを増している。米国ではストライプ(Stripe)やスクエア(Square)といった新興企業が、ペイパルから市場シェアを奪ってきた。欧州でもクラーナ(Klarna)が同様の動きを見せている。ペイパルにとって国際展開が重要になる。
投資家の失望も大きい。同社の株価は2021年7月の高値から約75%下落した。
ピーター・ティールが創業した同社は現在、国際展開を戦略の中核に据え直し、投資を強めている。狙いは、全体の成長を再び加速させ、米国のような成熟市場で強まる競争に対抗し、新興国で急成長する電子商取引の波を取り込むことにある。2024年通年の海外売上高は約135.3億ドル(約2兆1360億円)で、総売上高の約42.6%を占めた。
成熟市場での強み
ペイパルにとって、米国は引き続き最大の市場だが、同社は英語圏の先進国と欧州大陸部の先進国でも強い存在感を持つ。ドイツが米国に次ぐ第2の市場になっている背景には、電子商取引の力強い成長、クレジットカードよりデジタルウォレットを好む歴史的傾向、そして「今買って後で払う(BNPL=後払い)」やモバイル決済などの機能をペイパルがうまく組み込んできたことがある。ドイツでは、オンライン決済の64%をペイパルが占める。電子商取引の市場データ企業ECDBは、オンラインストアのデータベースに基づき、ドイツのオンライン事業者の93%がペイパルを受け入れていると推計している。これは世界で最も高い。
加盟店での受け入れ率という点では、イタリア、オーストラリア、ポルトガル、オーストリアも主要市場で、オンライン販売者の受け入れ率はそれぞれ91%、88%、83%、83%だ。イタリアでペイパルが支持されるのは、電子商取引での利便性だけでなく、安全な支払い手段だと受け止められているためだ。イタリアでは決済の安全性が重視されている。
欧州連合(EU)域外では、英国が圧倒的に重要な欧州市場である。金融イノベーションの拠点で、デジタルに精通した人口が多い。英国の重要性を示す例として、ペイパルは2025年11月に1億5000万ポンド(約317億円)を投じて英国で再ローンチした。英国を、同社初のグローバル・ロイヤルティ・プログラムであるPayPal+(ペイパル・プラス)の試験場として使っている。
ペイパルは2023年、英金融行為規制機構(Financial Conduct Authority:FCA)から、認可電子マネー機関および消費者向けクレジット事業者として営業する承認を得た。あわせて、英国の顧客をペイパル・ヨーロッパから、英国に拠点を置く新法人へ移管した。これらの施策で、競争の激しいデジタル決済市場で事業基盤を広げるための土台が整った。



