あさぎーにょが築く「世界観IP」 インフルエンサーの先へ

あさぎーにょ|ポップクリエイター / YouTuber

あさぎーにょ|ポップクリエイター / YouTuber

現在発売中のForbes JAPAN 1月23日発売号は「20 HOT CREATORS 進化するクリエイター経済」特集。日本の基幹産業として位置づけられているコンテンツ産業は、2033年には海外売り上げ額20兆円規模を目指す成長領域。経済界からもコンテンツ産業を含むエンタメ・クリエイティブ領域全体が成長市場としてとらえられ、資金の流入が進む。そんな市場において存在感を強めているのが、IPを起点に新たな需要を創出し産業としての広がりを生み出すクリエイターたちである。本特集では、作品や世界観を核に、シーンを形成しながら市場を拡張していく今注目のクリエイター20人を紹介する。

YouTubeから始まった発信は、やがてブランドや店舗展開、コラボレーションへと広がった。あさぎーにょは、ファン消費にとどまらない世界観をどう育て、事業へとつなげてきたのか。


「ワクワクを抱きしめよう」を合言葉に、カラフルポップであたたかみのある独自の世界観を発信するポップクリエイター/YouTuber、あさぎーにょ。「ハロー!あさぎーにょです」という決まり文句から始まる彼女の動画は、おしゃべりからファッションコーデやメイク、旅行のVlogなど実にさまざまだ。2015年に始めたYouTubeチャンネルは、登録者数約150万人。Instagram、TikTok、さらには中国のWeiboやbilibiliまで、国境やプラットフォームを越えて発信を続け、総フォロワー数は約500万人にのぼる。

「私のクリエイションのコア(核)は“色”です。言葉を色に変換したり、色からアイデアを思いついたり。鮮やかだけど強すぎない、包み込むようなペールトーン。そんなカラフルでポップな色で世界を満たして、誰もが日常の小さなワクワクを抱きしめられるあたたかい世界をつくりたい」

原宿にあるPOPPY本店。すぐ近くに2号店も展開している。
原宿にあるPOPPY本店。すぐ近くに2号店も展開している(POPPY提供)

こうしたビジョンから生まれるあさぎーにょならではの世界観を軸に、2020年には自身のアパレルブランド「POPPY(ポピー)」を立ち上げ、翌21年、原宿へ路面店をオープン。ディレクターとしてブランド構築から空間づくりまでを一貫して手がけ、年間来場客数10万人規模へと事業を成長させてきた。昨年秋には靴下専門店「Tabio」やグローバルティーカフェ「ゴンチャ」とのコラボレーションも話題に。彼女が生み出す世界観は、いわゆる「ファン界隈」にとどまらない独自のIPとなって世界に広がりつつある。

「Gong cha×あさぎーにょ」コラボのメインビジュアル。コンセプトストーリーをあさぎーにょが描き、Gong chaメンバーと共にビジュアルづくりもディレクションした。
「Gong cha×あさぎーにょ」コラボのメインビジュアル。コンセプトストーリーをあさぎーにょが描き、Gong chaメンバーと共にビジュアルづくりもディレクションした(Gong cha提供)

自分の未来に期待し続ける

あさぎーにょが広く知られるきっかけとなった2019年のYouTube短編映画「もう限界。無理。逃げ出したい。」の企画を担当したCHOCOLATEの栗林和明は、「あさぎーにょさんは、濃い原液になるような世界観を緻密につくり込める稀有なクリエイター」と評する。しかし、当の本人は「実は戦略的ではないんです」と笑う。

「ただ自分が好きなものを集めている感覚で。逆に私が戦略的にセルフプロデュースしようとか、世界観をつくることを意識しすぎたら、きっと息が続かない。いちばん怖いのは、自分の心が止まってしまうこと。活動も止まってしまうので」

その言葉の背景には、表現に迷い立ち止まった過去がある。もともと歌うことが大好きで、高校卒業後に音楽活動を志して上京したが、「歌を通して何を伝えたいのか」という問いに答えを見いだせず、一度は距離を置いた。日常のなかで心が動かなくなり、「一日中冷蔵庫を見つめて過ごした」時期もあったという。

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文=三ツ井香菜 写真=若原瑞昌 編集=松崎美和子

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