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2026.01.29 14:15

AIめぐる利害調整役「チーフAIオフィサー」は『新たな経営責任者』だ

Brunswick Social Value Review Issue 6「AI Impact」のページより

Brunswick Social Value Review Issue 6「AI Impact」のページより

本連載では、エンゲージメント戦略分野を得意とする戦略コンサルティング・ファーム、ブランズウィック・グループが発行する国際的な知見誌Brunswick Reviewから、グローバルの最前線でマルチステークホルダー・エンゲージメントを実践するヒントを探っていく。

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第4回はBrunswick Social Value ReviewのIssue 6「AI Impact」に掲載された、「The Rise of the Chief AI Officer」(邦題:チーフAIオフィサー(CAIO)の台頭)をご紹介したい。

第1章|生成AIは、AIを「経営判断の前提」に変えた

生成AIの登場は、AIの役割を決定的に変えた。生成AIは文章を書き、会話し、選択肢を提示し、時に意思決定そのものに影響を与える。いまや、AIは人間の判断領域に直接入り込みはじめた。

その結果、AIはもはやIT部門や研究開発部門のテーマではなくなった。経営企画、マーケティング、営業、広報、人事、法務など、ほぼすべての部門が、日常的に生成AIと向き合うようになっている。

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この変化が経営に突きつけている問いは、生成AIを使うかどうかではなく、生成AIを、誰が、どういう意図で、どう使うのか、である。

この問いに答えを持たない組織にとって、生成AIは競争力ではなく、不確実性とリスクの源泉になりかねない。

第2章|世界で急増するCAIO──「肩書き」ではなく「空白」を埋める役職

こうした背景のもと、世界で急速に存在感を増しているのがChief AI Officer(CAIO/チーフAIオフィサー、最高AI責任者)という役職である。Brunswick Reviewによれば、LinkedIn上で「Chief AI Officer」という肩書きを検索すると、すでに約1800件が確認でき、その数は生成AIの普及とともに急増している。

米国では、2023年の大統領令を受け、すべての連邦機関にCAIOの設置が義務付けられた。中東では、ドバイ政府が2024年に22人のCAIOを任命し、国家としてAI導入とガバナンスの責任を明確にしている。

この動きが示しているのは、CAIOが流行の肩書きだから増えているのではない、という点だ。AIに関する重要な判断について、「誰が決めるのか」「どこで決まるのか」が組織として定義されていない空白状態が、組織にとって最大のリスクになっているという認識が、世界で共有され始めているのである。

生成AIは、一度導入されると想定以上に広がり、現場主導で使われ、誤用や誤解によって評判や信頼を一気に損なう可能性を持つ。「誰が最終的に責任を負うのか」が曖昧なままでは、AIは価値創出のエンジンではなく、経営を揺るがす存在になる。

CAIOとは、その空白を埋めるために生まれた役職なのである。

次ページ > AIを巡る「判断」と「利害調整」を引き受ける

文=唐木明子 編集=石井節子

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