「海水温の上昇に伴って、漁獲や養殖適地が変化して対応が必要になっています。各地の名産品である水産物が取れないと、漁業者、養殖事業者への影響はもちろん、加工事業者、製氷事業者、箱屋、地元市場や地元飲食店といった流通業へも負の連鎖が起こり、地域経済への影響も大きい。だからこそ、品種改良による対応が急務です」
同社はこの問題に対して、いち早く取り組んだ。関西電力、福井県、ふくい水産振興センターらとともに、高水温環境での飼育試験を通じて高水温に強く、高い成長性を示すマサバを選抜し、かけ合わせることを繰り返すことで、高水温耐性マサバの品種改良を行った。また、陸上施設の高水温環境において、高水温耐性マサバと通常マサバとの3カ月間の比較試験を行った結果、生存率で約12.5%、成長率で約34%の有意な差を確認したとして25年7月に、「養殖に適した高水温耐性マサバの品種改良」に成功したと発表した。
同社は、高水温でも生存できる特性の開発に成功し、高温耐性サーモン、高温耐性ヒラメ、高温耐性マガキといった高温耐性品種開発の横展開にも成功している。「それに伴い、ビジネスモデルも成魚販売から、各地で名産品を作ってもらうべく、稚魚(種苗)を養殖事業者へ販売するモデルへと変更しました。地域活性化に寄与するという側面に加え、設備投資が少なく、利益率が高いというのも背景にあります」
同社は直近25年10月にも、プレシリーズDラウンドで19.6億円の資金調達を行い、累計資金調達額は約86.7億円で、評価額は約500億円にのぼる。一次産業、フードテック領域で最も高いバリュエーションになる。そして、「1社では限界がある」とし、これまで90社超とオープンイノベーション体制を構築し、「みんなで水産業を盛り上げる」という姿勢で挑んでいる。資本業務提携をした大企業や金融機関、VC、アカデミア、養殖事業者、地元関係者、公的支援機関と多岐にわたる機関と協業している点も新しい。23年6月には、NTTと合弁会社NTTグリーン&フードを設立し、「資本金90億円以上入れていただきながら」、スマート養殖場を建設して、稚魚を成魚に育てて販売していくこととなった。初手として静岡県磐田市で、国内最大級のエビ養殖プラントを1年で建設した。さらに、NTTグリーン&フードとして24年、関西電力の子会社で国内2位のエビ養殖プラントをM&A(合併・買収)し、グループ化。現在、宮城県気仙沼市で高温耐性銀鮭・サーモンの商用生産を行う施設も開発中だ。その結果として、リージョナルフィッシュの売上高も25年は17億円にのぼり、22年比較で42倍超となった。
「大企業や自治体、アカデミアなどと積極的に連携しながら、(業界変革を起こす)ビッグトレンドをつくりたい。私たちのコアは技術ですが、ディープテック企業でこのようなオープンイノベーションで事業展開をする企業はありません。だから、『技術と事業・経営の両輪』とも言えます。今後は、海外展開も視野に入れています。世界で唯一の品種をつくり、超効率的な生産を行い、世界一の加工技術につなげていく。このバリューチェーンをオープンイノベーションでつないでいくことができれば、日本の水産業は、再度世界一を目指せるのではないか、と思っていますから」
リージョナルフィッシュ◎2019年4月設立。京都大学と近畿大学の研究成果をもとにゲノム編集技術など最先端技術を用いて超高速で水産物の品種改良を行う。「いま地球に、いま人類に、必要な魚を。」を掲げ、20品種以上を開発。


