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創業177年を誇るラグジュアリーメゾンの老舗「エルメス」。徹底した同族経営ながら、「革新的な企業リスト」にも名を連ねるなど、その存在感は他の追随を許さない。その秘訣はなんなのか。昨年6月にCEOの座に就いた、アクセル・デュマに聞いた。

ジャン=ルイ・デュマは、エルメスの製品をメンズウェア、食器、そして家具にまで広げた。その結果、1989年から2006年まで に売り上げはそれまでの4倍の19億ドルとなった。それでも、このプランは「完璧」とはいえなかった。10年、LVMHのトップであるベルナール・アルノーが、その成長に目をつけていたことが発覚したのだ。エルメスは、拡大しつつあったアルノーのポートフォリオにぴたりと当てはまった。そこで彼は、02年ころから密かにエルメスの株を取得し始めた。

アルノーは10年になると、エルメスの株の17%を所有していることを公にした。この時点で、株価は30%も上がった。世間的には「買収はほぼ決まった」と思われたのだ。エルメスの創業者一族は株主であることを放棄し、巨額の富を手に入れるのだろう、と。だが、実際には彼らはそれとはまったく異なる道を選んだ。このアルノーの計画は、エルメス創業者一族にとって、奇しくも転換期となった。彼らは株式を現金化することなく、いっそう結束を強めた。彼らは11年に、エルメス株の50.2%を保有する持ち株会社 「H51」を立ち上げた。そこでは「今後20 年間株式を売却しない」という契約が結ばれた。
主要株主である一族の5世代目、ベルトラ ン・ピュエシュとニコラ・ピュエシュは、H51に自分たちの株式をプールしなかったが、株式を売る際には、ほかのファミリーメンバーに優先交渉権を与えることに合意した。
それからも、LVMHとエルメスの対立は続いた。だがエルメスは「私たちは独立し続けるために闘います」と訴え続けた(その後、今年9月に両社は和解)。創業者一族が団結して闘う、という姿勢 は、結果的にエルメスに利益をもたらした。「20年」という時間の枠をつくったことで、同社は長期的な視点で大きな決定を行うことができるようになったのだ。

神秘性とは、生み出すのも、維持するのも、容易ではない。だが、それで成功した数少ない例がエルメスだ。(中略)
だが、エルメスの神秘性を守っているのは、何よりファミリー自身にほかならない。ファミリーでない役員がメゾンやその戦略 についての決定を行う際は、少なくとも、エ ルメスの子孫の1人からの意見を入れなければならないそうだ。これは、かつてエルメス の役員を務めたことのある、エルメスと親しい関係にあった高級品コンサルタントと同社 のアジア役員が匿名で明かしてくれた。子孫の多くは、同社で複数のポジションに ついており、そのようにして複数の部門を支配しているのだ。
「テーブルに3〜4人いて、ファミリーのメンバーが『イエス』と言ったときに、誰が『ノー』と言えるでしょうか」と、元コンサルタントは言う。「それに反対できるほど、力のある人物などいないのです」(以下略、)

スーザン・アダムス

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