リーダーシップ

2026.01.20 12:30

「上司の異論歓迎」はリスク、賢い従業員こそ慎重に判断する理由

RollingCamera / Getty Images

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職場でリスクという言葉を聞くと、たいていの人はどんな不利益が自分に起こり得るかを考える。リスクは失業や評判の悪化、評価の低下、そして「主張することで今後どう見られるか」といったことを連想させる。リーダーは自分がアイデアを歓迎していると思っているかもしれないが、従業員の受け取り方はまったく異なる。以前誰かが異議を唱えたときにどう扱われたか、何か良いことにつながったのかを従業員はよく見ている。リスクが前進ではなく個人の損失と結びついて感じられると、どれほど有能な人であってもおとなしくしているほうが安全だと考えるようになる。たとえリーダーが発言するよう頻繁に促したとしてもだ。

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励ましだけでは変わらない

リーダーは、励ましたのに行動が変わらないと驚くことが多い。リーダーの視点では、意見を求め、異論を歓迎すると口にすることで自分の意図を明確に伝えている。だが従業員側からすると、言葉よりもパターンのほうがはるかに重要だ。誰かが懸念を示したり、決定に疑問を投げかけたり、あるいは提案したアイデアが無視されたり、もっと悪い場合は罰せられたりした後に何が起こるのか、人々は注意深く見ている。その瞬間が基準点となり、未来の行動を決定づける。Gallup(ギャラップ)の調査では、職場で自分の意見が重視されていると強く感じている従業員は約28%にすぎない。この隔たりこそ、励ましだけでは行動が変わりにくい理由だ。

アイデアに対して防衛的な反応や露骨ないら立ち、あるいは後になってからの微妙な敬遠が返ってくると、人は気づく。小さな反応でも積み重なる。異論のほうが同意よりも長く記憶されるようなら、「率直な意見を歓迎する」と言うことには大して意味がない。やがて人は試すことをやめ、保守的になり始める。

賢い人が職場で慎重である理由

ためらいは自信や能力の欠如だと思い込みがちだが、実際は逆であることが多い。賢い人は通常、組織が実際にどう機能しているかを理解している。彼らは非公式な権力や暗黙の期待、そして評判が時間をかけてどのように築かれ、損なわれていくかを見ている。その認識が彼らを慎重にする。

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また、賢い人ほど多く投資し、それゆえに失うものも大きい傾向がある。何年もかけて信頼を築いてきた人にとっては、不評だったアイデアひとつで何カ月分、場合によっては何年分もの進展が台無しになり得る。人が慎重になるのは、単なる恐れだけではなく、過去の否定的な経験に基づいていることが多い。

アイデアより評判への影響を懸念

職場において評判は従業員の通貨のようなものと考えることができる。誰が重要なプロジェクトを任されるか、誰が昇進に値すると見られるかを左右する。人はこの構造を理解した瞬間から、評判を守ることを最優先するようになる。

従業員にとって、リスクにはその後に起こることが含まれている。影響力のある人との間に摩擦が生まれるのか、将来の機会に影響するのか、あるいは後から取り返しのつかない形で記憶されるのかを考える。これらは現実的な懸念であり、励ましよりも行動にはるかに大きな影響を与える。

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翻訳=溝口慈子

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