Apple Creator Studioの発表が、クリエイティブツールを生業にしてきたAdobeとCanvaがカバーしてきた市場領域を揺るがしている。市場を支配しているとも言える両社が、ともに手の届きにくい事業領域に、アップルが鋭く切り込んできたからだ。
Apple Creator Studioは多くのプロダクトを内包しているが、核心となる情報は以下の通り(対応OS・デバイスの細部は割愛する)。
・Final Cut Pro(Mac/iPad):動画編集
・Logic Pro(Mac/iPad):音楽制作
・Pixelmator Pro(Mac/iPad):画像編集(iPad初登場)
・Motion/Compressor/MainStage(Mac):映像・配信周りの“相棒”
・Keynote/Pages/Numbers:プレミアムテンプレ+AI機能、素材ライブラリ「Content Hub」
・最大6人までのファミリー共有
「これによりデジタル制作で動画、写真、音楽などの制作物物を“作って出す”」一連を、このプロダクト内で閉じことが可能になる。不足しているのは本格的なイラストを制作するベクターグラフィクスの編集ツールぐらいだろうか。
Final Cut ProとLogic Proは、元々プロフェッショナル向けに開発されてきた製品が、AI機能によるシンプルな使い勝手も含めてアップデートされる。
価格は驚くほど安い。月額1780円、年額1万7800円ですべての製品が利用でき、学生・教職員ならば月額480円、年額4800円。つまり、学生ならば、コーヒー一杯の価格で本格的なクリエイティブツールを一気に揃えることが可能となる。ファミリー共有にも対応しているため、家族の誰かが加入していれば、全員がこれらすべてのアプリを利用可能になる。
さらには最初の1カ月は無料で使えるだけではなく、MacあるいはiPadを購入して登録してから3カ月以内に利用開始すると3カ月無料となる。既存のMac、iPadユーザーも利用可能になってから3カ月以内(つまり本製品の提供開始後3カ月以内)は同じ扱い(3カ月無料)だ。
“業界地図が書き換わる”と表現するのは簡単だが、“地形が変化する”と表現するようなインパクトをもたらすだろう。
MacとiPad限定とはいえ、カジュアル層に定着しているCanva、企業向けおよびハイエンド層に高価格・高付加価値なツールを提供してきたアドビの成長戦略にも少なからぬ影響が出るだろう。
“カジュアル価格だが本格的”、中間層を狙ったアップル
Apple Creator Studioは、既存の“Proアプリを抱き合わせ”た製品ではない。
価格設計・AIの置き方・教育期間向け割引の3点セットで、クリエイティブツールの業界がここ数年の急成長するエンジンとなってきたYouTuber/インフルエンサー/フリーランサー/小規模事業者──いわば“クリエイター中産階級”を狙い撃ちした、実に戦略的なプロダクトになっている。



