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2026.01.20 10:30

Apple Creator Studioが描き換える「クリエイティブ市場の勢力図」

ビデオ編集、音楽制作、プロの画像処理、ビジュアルの生産性のためのパワフルなクリエイティブアプリをサブスクリプションパッケージApple Creator Studio(Apple)

たとえば「YouTube動画を編集して、音を整え、サムネイルを作り、投稿時の概要欄や告知用の投稿の文案まで仕上げる」といった一連の作業をひとりでこなすことがほとんどだろう。

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Canvaはこの作業全体をウェブ上でまとめているが、アップルはMac/iPadというハードウェアプラットフォーム上でまとめた。

このふたつのハードウェアは、安価かつ本格的なツールであるApple Creator Studioへの“入場券”のようなものだ。いずれかのデバイスを使うのであれば、Canvaに近いコストでより自由度の高いクリエイティブツールを入手できる。

さにここに“AI機能”のコストを加えると、コストの逆転現象が起きてくる。

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Apple Creator StudioのAI機能は、そのほとんど(Image Playgroundでは一部の画像生成をOpenAIに投げることもある)がオンデバイスで処理される。

なぜなら、両者のAI機能には質的な違いがあるからだ。

CanvaのAI(マジックスタジオ)は、「テキストから画像を生成する」「何もないところからデザインを生み出す」といった生成に重点を置いている。これはテンプレート機能の拡張版ともいえるだろう。

一方でアップルのAIは、「動画内の特定のシーンを言葉で検索する」「音楽のビートに合わせてカットを切り替える」「背景を分離する」といった、作業の効率化を目指した支援機能に重点を置いている。しかもオンデバイスで実行されるため、待ち時間も生じない。

中間層であるハイアマチュア(プロシューマー)やSNSクリエイターの好みには、アップルのコンセプトの方が合致しやすい。CanvaはAI活用と価格設計の面で、戦略の見直しが求められるだろう。

Apple Creator StudioはMacとiPad限定のパッケージとなる(Apple)
Apple Creator StudioはMacとiPad限定のパッケージとなる(Apple)

“コーヒー一杯”で立てるクリエイターへの入り口

アドビの牙城は揺るがないと論じたが、長期的に見れば、今後の成長領域に制約を受けることになる。理由は学生・教職員むけの月480円という価格設定だ。毎月コーヒー一杯分を支払うだけで、本格的なクリエイティブの世界への入口に立てる。

アドビは学生向けにAdobe CCを安価に使ってもらえるようライセンス条件を緩和するなどして、将来のクリエイターが同社のツールでの制作に慣れる下地を作ってきた。

学生たちが社会に出て、大規模な制作案件に加わるようになり、MacとWindowsが混在する環境で、共同制作の現場を経験するようになるとき、そのスキルは役に立つ。アドビの強さは“プラットフォームとして確立”された強さである。

しかし、PCやMacを持たず、タブレットから制作に入る世代が今後は増えていくだろう。“MacとiPadのみ”と書いたが、タブレット端末に限ればクリエイティブ志向の製品はiPad以外にない。

そうした学生たちが最初に覚えるのがFinal Cut ProやLogic Pro、Pixelmatorなのだとしたら、アップルの“クリエイター中産階級”での地盤は強固なものとなる。アドビがライセンス数を拡大させてきたこの中間層を固められると、成長軌道をどう描くかという戦略面において何らかの軌道修正が必要になるはずだ。

編集=安井克至

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