アドビが支配的だったクリエイティブツールの世界で、Canvaデジタル制作に誰もが取り組めるだけの環境を安価に、そしてウェブベースで揃えることで成長した。
一方で、長年プロフェッショナルの制作現場を支えてきたAdobe Creative Cloud(Adobe CC)の牙城も崩れない。機能面でもワークフローの面でも、両者の間には大きな乖離がある。
クリエイティブの現場で、最も高くつくものとは何か? それは高価なプラグインでも、最新のカメラでもない。制作にかかる時間である。だからこそ、少しばかり高価でも“稼げるツール”としてアドビの製品が選ばれてきた。
しかし、この両者の事業拡大を支えてきたのは、実はCanvaとAdobe CCが狙うユーザー層の中間層だ。
トップのYouTuber/インフルエンサーならば、Adobe CCの価格はさほど気にならない。しかし多くのクリエイターにとって、Adobe CCのフルセット(月額9080円)は“軽くはない”。それでも使うのは、Canvaでは目的を達成できないからに他ならない。
Apple Creator Studioなら、単純比較でおよそ6分の1に落ち、しかもファミリー共有が成立するなら体感コストはさらに落ちる。
同様の大企業ならAdobeのソリューションは十分に納得できる価格設定ではあるが、クリエイティブなメニューを業務の一部に導入している、つまりクリエイティブツールへの収益依存度が低いフリーランサー/小規模事業者にとって、このコスト差は無視できない。
つまり、Adobe CCの持つ本質的な価値やコアのユーザー層は揺るがない。しかし、そのライセンス数が伸び続けてきた成長エンジンとなっている新規顧客である“クリエイティブ中産階級”は、Apple Creator Studioに惹かれるはずだ。
“業界地図を書き換える”と表現する人もいるだろうが、その本質は“地形の変化”だ。
エントリー、カジュアル層とプロフェッショナル層の間に成長していた中間層を整備し、そこに新しい市場を生み出して、業界全体の景色を変えようとしている。
Canvaの”弱み”を狙うアップル
一方でCanvaが開拓してきたカジュアルなクリエイティブの領域で、同社は大きく戦略を変えていく必要があるだろう。“安さ”と“手軽さ”が売りだったCanvaの製品だが、進化の軸にはクラウドベースの生成AI機能が多用されるようになり、Canva ProやCanva for Teamsの価格設定は上昇している。
Canva自身、今後は生成AIを活用する機能の増加とともにクレジットの追加購入が必要になるケースもあり得ると発信している。
カジュアル層や中間層のクリエイターは、豊富なテンプレートや素材集で、本格的な動画、音楽、画像を制作し、最終的にそれをプレゼンテーションや印刷物、あるいはSNS発信の素材として“単独で”仕上げていく。


