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2026.02.10 15:15

無人卓球場「PingPod」が米国Z世代に人気、CTOはゴールドマン・サックスOB

24時間営業・完全無人の卓球場「PingPod」HPからのスクリーンショット

24時間営業・完全無人の卓球場「PingPod」HPからのスクリーンショット

ニューヨークのZ世代の間で、ある場所が静かな人気を集めている。バーでもジムでもない。24時間営業・完全無人の卓球場「PingPod」だ。利用者はアプリで卓球台を予約し、送られてくるコードで入室する。スタッフはおらず、施設はカメラによって遠隔管理されている。

「気軽さ」が人気を呼ぶ価格・動線設定

ミレニアル・Z世代研究所「NY FUTURE LAB」によると、40分15ドル前後という価格設定もあり、PingPodは若者の間で「気軽で、誰にも気を遣わずに過ごせる場所」として定着しつつあるという。

卓球をしながら会話をし、疲れたら座って話す。飲み物の持ち込みも可能で、犬の同伴が認められている店舗も。都市生活者にとって希少になりつつある自由度の高い滞在空間が、そこにはある。

「PingPod」East 86th店 紹介ページのスクリーンショット
「PingPod」East 86th店 紹介ページのスクリーンショット

ニューヨーク発、急拡大する無人モデル

PingPodは2020年にマンハッタンで最初の拠点を開設して以降、現在は米6州20カ所以上に展開。ニューヨーク/ニュージャージーエリアだけでも11拠点を構えるほか、イギリスやフィリピンにも進出している。

ほとんどの店舗が24時間年中無休で、パドルなどの備品も完備。人的オペレーションを極限まで削ぎ落とした運営が特徴だ。無人運営がコロナ禍でも功を奏し、事業を軌道に乗せた。

このモデルを率いるのが、元UBSの株式調査アソシエイトだったデイビッド・シルバーマン氏である。彼は既存のビリヤードクラブ運営会社を買収し、子会社PodPlayを設立。PingPodで培った自社ソフトウェアや無人運営の仕組みを、他のスポーツ施設へ提供するB2B事業にも乗り出している。

さらに直営に加え、フランチャイズ展開も開始しており、同社は2024年に500万〜1000万ドル規模の収益を見込んでいるという。

Z世代にフィットした「強制しない」空間

注目すべきは、この事業が「都市コストへの解」として設計されている点だ。ニューヨークにおいて、窓付きの1階路面物件の賃料が極めて高いことは想像に容易い。そこでPingPodは、無人化によって人件費をほぼゼロに抑え、営業時間を最大化し、固定費の重さを吸収している。インフレが続く環境下でも、価格を上げずにサービスを維持できる構造を持つ。

また、Z世代との相性も見逃せない。バーのような騒音やアルコール前提の場でもなく、ジムのように目的が固定された空間でもない。運動と会話が緩やかに共存するこの場は、「何をするか」を強制しない。オンラインコミュニティで相手を見つけたり、必要に応じてコーチを呼んだりできる設計も、利用者側に主導権を残している。

ゴールドマン・サックスでアプリ開発に携わったイリヤ氏がCTOに

PingPodの拡張性を支えているのが、子会社PodPlayの存在だ。PingPodの運営ノウハウと技術を外部施設へ提供するためのB2Bプラットフォームとして機能し、PodPlayを導入したクラブオーナーは、無人化による自律運営が可能に。従業員数を極限まで削減しながら営業時間を延長できる。

最高技術責任者(CTO)には、ゴールドマン・サックスでモバイル部門を率い、ナイキやエクイノックスのアプリ開発にも関わったイリヤ・リブキン氏が就任。PodPlayはソフトウェアと技術のライセンス料を月額で課すSaaSモデルを採用し、2024年時点で11州53施設が導入しているという。

導入施設の約8割はアメリカで今人気のニュースポーツ「ピックルボール」施設で、その他サッカーやパドルクラブとも契約を結び、ゴルフシミュレーターや複合スポーツ施設への展開も視野に入れている。

都市型スタートアップが示す一つの勝ち筋

PingPodは、Z世代に卓球がヒットしたサービスというよりも、都市の高コスト構造とインフレ環境を前提に設計された事業モデルだと言える。無人化による固定費圧縮、直営とSaaSを組み合わせた収益構造、そしてスポーツ施設全体へと広がる技術基盤。PingPodが示しているのは、都市における「遊び」と「滞在」を再定義する一つの勝ち筋なのかもしれない。

文=齋藤優里花 編集=石井節子

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