AIの統治・管理と法規制
自律的な振る舞いと意思決定が最新のスマート機器に組み込まれているのだから、AIを日常生活に安全に取り込むために必要な法令順守(コンプライアンス)、統治・管理(ガバナンス)、安全の枠組みに、より焦点が当たってもよかったはずだ。ここは明らかな盲点であり、AIが安全の歯止めの整備を上回る速度で進化していることを示している。このずれは、ビジネス利用者と一般利用者の双方に対する警告として受け止めるべきである。統治・管理の成熟度はベンダーによって大きく異なる。これを補う強固な社内方針がなければ、組織はリスクを十分に理解しないまま、危ういシステムと仕事を進めることになりかねない。
プライバシー、サイバーセキュリティ、データ保護
利用者の感情の状態を把握できるAI搭載のホームアシスタントやウェアラブルが、見出しを飾り、賞も獲得していた。しかし、こうした機器が音声、位置情報、生体情報、行動データを常時収集していること、そしてそれが生むリスクについての言及はほとんどなかった。どのデータが保存され、どう扱われるのかという正確な中身は、常に分かりやすいとは限らない。これは、データ保護方針を明確に伝えることが、機能や使い勝手を見せることの後回しになりがちだという事実を思い出させる。つまり、プライバシーとセキュリティは依然として「後付け」扱いであり、技術がより没入的になって組織に深く入り込むほど、リスクは増す可能性が高い。
AIの真の価値提案
この1年、「AIバブル」については多く語られてきた。AIに流れ込む巨額投資を正当化するには、企業が実際の価値を生み出せることを示し始めなければならない、と主張する人も多い。CESでは、メーカーが家事支援ロボットや状況に応じて動くスマートホーム機器を披露したが、AI研究や運用時にクラウド上でAIを動かすための推論処理に投じた莫大な費用を、これらの革新がどう回収するのかについての手がかりはほとんど示されなかった。企業のリーダーが最も必要としている一点、すなわち目を引く能力を持続可能な事業成長につなげる明確な道筋については、ほとんど語られなかった。
おわりに
これらの「語られなかったこと」が思い起こさせるのは、企業にとっての課題は、見出しを飾る「驚き」の要素の先を見据え、触れられていない点に目を向ける必要があるということだ。
ラスベガスで発表されたイノベーションは世界を変える可能性があるが、それは私たちの働き方やビジネスのやり方に思慮深く統合された場合に限られる。雇用、環境、セキュリティ、そして企業の収益への影響について議論することが、その潜在能力を安全な形で最大限に引き出すために不可欠なのだ。


