AI

2026.01.16 15:00

CES 2026で「エヌビディア」が発表したこと、発表しなかったこと

エヌビディアCEOのジェンスン・フアン(Shutterstock)

エヌビディアCEOのジェンスン・フアン(Shutterstock)

今やCESにおけるエヌビディアの基調講演は、世間の注目を狙った消費者向けデバイスの発表というより、より広いAI経済におけるエヌビディアの役割を語る場になっている。CES 2026も例外ではなかった。ゲーム向けのアップグレードやパートナー各社のハードウェア展示はあったが、真の主題は、AIへの依存が強まる世界で「インフラ」の意味を再定義し続けようとするエヌビディアの取り組みにあった。

エヌビディアの発表の中心にあるのは、次世代AIプラットフォームのルービン(Rubin)だ。ルービンは単一のチップでも、単なる製品ローンチでも、マーケティング上の更新でもない。AIシステムをどう作り、どう展開し、どう効率よく規模を広げるかを作り替えようとするエヌビディアの試みである。エヌビディアはルービンを軸に、自動運転、クラウドゲーム、ディスプレイ技術、そしてジェンスン・フアンCEOが「フィジカルAI」と呼ぶ分野に至るまで、幅広い発表を重ねた。

経営層や技術者にとってのメッセージは明確だ。AIは既存システムへの付け足しではなく、システムそのものになりつつある。

チップから「工場」へ

ルービンを理解するには、GPUを孤立した部品として捉える発想をいったん忘れるとよい。エヌビディアはもはや従来の意味で「チップ」を売っているのではない。AIの出力に人々が求める価値を、さまざまな要素を束ねた統合AIシステムとして提供している。

天文学者ヴェラ・ルービンにちなんで名付けられたルービンは、CPU、GPU、ネットワーク、インターコネクト(プロセッサー間の接続)、ソフトウェアを一体として組み合わせ、大規模AI向けに作り込んだプラットフォームである。エヌビディアの従来アーキテクチャであるBlackwell(ブラックウェル)などもすでにこの方向に進んでいたが、ルービンはそれを加速させる。価値は単なる計算性能の高さではなく、効率性、信頼性、そして大規模運用でも見通しどおりの出力を得られる点にある。

ルービンには重要な狙いが3つある。

第1に、同じエネルギーとコストでこなせるAIの仕事量を大幅に増やすことだ。AIモデルが大規模化・複雑化するにつれ、消費電力と運用コストが制約になってきた。ルービンはAIを「速くする」だけでなく、「安く動かす」ことを狙って設計されている。

第2に、ネットワークを中核として扱うことだ。AIシステムが失敗したり止まったりする原因は、計算が遅いことより、プロセッサ間でデータを十分に速くやり取りできないことにある場合が増えている。ルービンの新しいインターコネクトとネットワーク部品は、こうしたボトルネックを取り除くことを目指す。

第3に、AIインフラを標準化する。各社がハードウェアとソフトウェアを寄せ集めた独自構成を苦労して設計する代わりに、ルービンはデータセンター、クラウド事業者、企業が不確定要素を減らし、より一貫した成果を得られる参照設計を提供する。これにより、競争が激化する市場で、どこかのソフトウェアやネットワーク設定が悪影響を生み、ブランドの評判を傷つけるといった問題も回避できる。

ルービンは「支配」の話でもある。フルスタックのAIプラットフォームを提供することで、エヌビディアはAIのバリューチェーンに対する支配力を強める。顧客が買うのはGPUだけではない。AIをどう構築し、どう運用すべきかというエヌビディアの考え方ごと買うことになる。

これは2つの結果をもたらす。大企業やクラウド事業者にとって、ルービンは統合のリスクを減らす。最適化された既知のシステムを手に入れ、「そのまま動く」環境に近づく。AIの取り組みが収益、法令順守、競争優位と結び付く局面では、これは重要である。

競合にとっては、ルービンがハードルを引き上げる。速いチップがあるだけでは足りない。半導体、ソフトウェア、ネットワーク、開発者向けツールまでをもまたぐエコシステムが必要になる。これははるかに難しい課題だ。その意味でルービンは、技術的な優位というよりプラットフォームによる囲い込みに近い。ただしエヌビディアがそう表現することはないだろう。

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翻訳=酒匂寛

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