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2026.01.23 15:00

睡眠時無呼吸症候群の「飲み薬」開発、米FDA承認を目指す新興Apnimed

perthstagedtosell/Shutterstock.com

2017年、Apnimedを立ち上げへ

ミラーは2017年にApnimedを立ち上げ、ハーバード大学と特許権のライセンス交渉を行った。モンテムーロは共同創業者として参画し、その後、最高科学責任者に就任した。Apnimedは、2019年8月に、香港の不動産事業で財を成した一族出身のジェラルド・チャンの投資会社、Morningside Groupから2600万ドル(約41億円)を調達した。ミラーは、現在の自身の持ち分について「小さな割合だ」と説明している。

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「彼らは本物だ」と語るのは、2022年に同社に臨床開発担当上級副社長として加わったジョン・クローニン医師だ。クローニンはそれ以前、CPAP装置大手2社の一角であるフィリップス・レスピロニクスで、睡眠・呼吸ケア分野の最高医療責任者を務めていた。「睡眠医療の世界では、『本当に約束を果たせるのか』と疑問を抱かせるリーダーを何人も見てきたが、彼らは違う」。

パンデミックで資金難に直面、家族の体験談が投資の決め手に

Morningsideからの初期資金の調達はスムーズに進んだが、その後のコロナ禍でバイオテック分野が投資家の関心を失うと、資金集めは一気に難しくなり、その後の資金調達では「数え切れないほど」の面談を重ねたとミラーは振り返る。

そんな中、2022年に投資を決めたのが、SpaceXやOpenAIへの出資でも知られるAlpha Waveだ。同社のマネージング・ディレクター、クリス・ディミトロプロスにとって、その決め手は、睡眠時無呼吸症候群を患う家族から聞いた体験談だった。それは、毎晩マスクを装着して眠る不便さについての話で、話を聞くうちにどれだけ多くの人が影響を受けているのかが分かってきたという。やがて彼は、この病気がいかに広く蔓延し、健康への影響がどれほど深刻かを実感するようになった。「その深刻さを、世界はまだ本当の意味で理解していないと思う」とディミトロプロスは語る。

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第3相試験で症状が大幅改善、肥満症薬ゼップバウンドとは異なるアプローチ

Apnimedでの過去8年間、モンテムーロ医師とその研究チームは、2種類の薬を組み合わせた飲み薬の検証と改良を重ねてきた。昨年終了した第3相臨床試験では、この薬が夜間の呼吸を改善する効果を示した。昨年7月に報告された試験の1つでは、睡眠時無呼吸症候群の重症度を示す指標である無呼吸低呼吸指数(AHI)が、26週時点で47%低下した(プラセボは7%だった)。重篤な有害事象は確認されていない。ただし、副作用として口の渇きや不眠といった軽度の症状が報告された。

現在、すべての患者に有効な睡眠時無呼吸症候群の飲み薬はほかに存在しない。2024年末には、FDAが、肥満の成人における中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の治療薬として、イーライリリーの減量薬ゼップバウンドを承認した。ただし、これはApnimedの飲み薬とは作用の仕方が異なる薬だ。ゼップバウンドは、過体重の人が体重を減らすことで夜間の呼吸が改善される点を利用したもので、睡眠時無呼吸症候群そのものを直接治療する薬ではない。また、軽度の患者や肥満でない人向けには承認されていない。

Apnimedは、治療を受けていない睡眠時無呼吸症候群の患者が非常に多いことから、治療の選択肢が増えるほど潜在市場は拡大すると見ている。同社が過去5年分の医療保険請求データを分析したところ、睡眠時無呼吸症候群と診断された人は2300万人に上ったが、これは、実際に罹患していると考えられる人数の一部にすぎない。そのうち治療を受けていたのは650万人にとどまっていた。「診断を受けても、大半の人が治療に至っていないと我々は考えている。そこが、この分野の根本的な歪みだ」と、Apnimedの最高商務責任者グレアム・グッドリッチは語る。

同社はすでに、今後の薬の成否を左右する重要な要素である保険適用について保険会社との協議を進めている。睡眠時無呼吸症候群向けの最初の飲み薬に続き、Apnimedは日本の製薬会社である塩野義製薬と提携し、2つの候補化合物の開発にも取り組んでいる。

将来的には、睡眠時無呼吸症候群の患者も、ほかの主要な疾患と同じように複数の治療の選択肢を持つようになると、ミラーは考えている。「ぜんそくや高血圧と同じようなものになる」と彼は、薬物治療が確立している慢性疾患を例に挙げた。「医師としては、患者にとって最適な治療を選びたい。しかし、これまでは、それが可能ではなかった」とミラーは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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