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2026.01.23 15:00

睡眠時無呼吸症候群の「飲み薬」開発、米FDA承認を目指す新興Apnimed

perthstagedtosell/Shutterstock.com

注目されなかった睡眠医療、治療法は1980年代から停滞

睡眠医療は、つい最近まで大きな注目を集める分野ではなかった。現在でも、シリコンバレーで「睡眠」をめぐって盛り上がっている話題の多くは、消費者向けのハイテクマットレスやウェアラブル機器に関するものだ。睡眠時無呼吸症候群について、近年はいくつかのアーリーステージのスタートアップが取り組みを始めているものの、依然として世間の関心は高いとはいえない。「関心を引くタイプの病気ではない」とミラーは語る。「アルツハイマー病のように広く知られ、議論を呼ぶ疾患もあるが、睡眠時無呼吸症候群の治療は地味な分野だった」。

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その理由の1つは、人々が人生の約3分の1を費やす睡眠そのものが、まだ十分に解明されていない点にあるのかもしれない。あるいは、この病気が深刻ではない、肥満の中年男性だけの問題だという誤った認識が根強いことも背景にあるだろう。また、CPAP治療が実用化されたのは1981年のことで、それ以前は、重度の睡眠時無呼吸症候群の患者に対し、気管に外科的に穴を開ける気管切開という侵襲的な治療が行われていた。

「閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、極めて深刻な公衆衛生上の問題にもかかわらず、過小評価され、十分に診断も治療もされてこなかった」と語るのは、Apnimedのコンサルティングにも関わったネイト・ワトソン医師だ。睡眠医療の専門医で、米国睡眠医学会の前会長を務めている。

モンテムーロ医師がポスドクとして在籍していたブリガム・アンド・ウィメンズ病院で、睡眠呼吸障害研究室を率いるアンドリュー・ウェルマン医師にとって、睡眠時無呼吸症候群の治療薬を開発することは、長年の夢だった。

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彼は25年前、まだ若手研究員だった頃から、睡眠時無呼吸症候群の治療法を生み出したいと考えてきた。というのも、極度に肥満で舌が大きく、首回りが太い人であっても、起きている間は睡眠時無呼吸症候群を発症しないことから、この疾患には化学的な要因があり、薬による治療が可能なはずだと確信していたからだ。

40種類の候補薬が失敗、飲み薬はこの分野の長年の悲願

しかし、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対しては、これまで少なくとも40種類の薬剤候補が試されてきたものの、「いずれも成功には至らなかった」とApnimedの共同創業者のミラーは語る。「睡眠時無呼吸症候群の飲み薬は、この分野で長年、“聖杯”のように実現が待ち望まれていた」とウェルマン医師は言う。

データの確実性に衝撃、引退予定だった連続起業家ラリー・ミラー医師が参画を決意

モンテムーロ(47)は、イタリア北部の小さな町ロヴァートで育ち、ウェルマン医師の研究室で働くために米国へ渡ってきた人物だ。それまで何度も期待を裏切られてきたからこそ、ウェルマン医師は彼とともに患者を対象とした試験で薬が効いている兆しを確認したとき、2人は大きな衝撃を受けた。「正直なところ、我々の発見が本物だとは信じられなかった。それまで何度も、期待を裏切られていたからだ」と振り返る。

研究室での結果を受けて、ウェルマン医師は、呼吸器内科医で連続起業家でもあるミラーに連絡を取った。ミラーは1990年以降、すでに9社を起業しており、そのうち7社を最終的に総額10億ドル(約1580億円)以上で売却していた。ウェルマン医師から連絡を受けた当時、ミラーはMacrolide Pharmaceuticals(マクロライド・ファーマシューティカルズ)に関わっており、新しいタイプの抗生物質を開発するという大きな構想を描いていた(同社は、2015年にノバルティスとロシュのベンチャー部門から2200万ドル[約35億円]の資金を調達して立ち上げたが、事業が思うように進まなかった。その後社名と事業内容を変更したうえで、2021年に別のアーリーステージの製薬会社に約2500万ドル[約40億円]で売却されることになった)。

ミラーは自身のスタートアップ遍歴について「中毒みたいなものだと思えばいい」と、目を輝かせながら語る。「この会社を立ち上げる前は、もう起業は終わりにしたいと思っていた。だが、アンドリューからデータの話を聞いたとき、これはあまりにも出来が良すぎる、やらずにはいられないと思った」と話す現在72歳の彼は、子どもから「世界最高齢のスタートアップCEO」と呼ばれていると笑う。

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翻訳=上田裕資

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