イランの1999年以降の抗議運動は、シリアやチュニジアと異なる軌跡をたどった。1999年の学生デモ、2009年の「緑の運動」、2017〜19年の経済的な不満からの暴動、2022年の「女性、生命、自由」デモは、いずれも規模と地理的広がりの点では際立ったものだった。しかし、これらの抗議運動はどれも、行動を調整したり、弾圧をしのいだり、あるいは動員を持続的な政治的影響力につなげたりできるような、長続きする組織構造をつくり上げるには至らなかった。
現在の蜂起は過去の抗議運動と同じくらいの地理的な広がりを見せ、持続的な勢いも示している。政権側は8日、インターネットへの接続をほぼ全面的に遮断し、トラフィック(通信量)は通常の水準から約90%減少した。このブラックアウトは、通信遮断をくぐり抜ける調整メカニズムが存在するのかどうかの試金石になっている。
イスラエル国家安全保障研究所(INSS)でイラン研究プログラムのディレクターを務めるラズ・ジムトは、今回の抗議運動にこれまで欠けている要素として、イランの主要な経済部門、とくに石油産業の労働者の大規模な参加を挙げている。1978〜79年にシャー(王)の体制が打倒された時には、石油労働者のストライキが重要な役割を果たした。彼らの不在は、現在のデモを、体制を脅かす圧力に転換していくための組織的な調整がいまだ実現していないことを示唆する。
条件2:治安機構の結束
革命的な体制転換には、エリート層の離反や軍の中立、あるいは治安部隊の分裂が必要になる。外部からの圧力は、体制の脆弱性を露呈させることで、治安機構の分断を加速させる場合がある。一方で、それが国家に対する攻撃と受け取られた場合には、かえってその結束を強めかねない。
ジムトは「弾圧・執行機構の行動、とりわけこれらの機構内の亀裂や分裂を示す兆候があるかどうか」を最も重視しており、そうした兆候の例として「任務放棄や機能面の疲弊、弾圧への非協力的な姿勢」を挙げている。
そのうえで、11日時点で「そうした兆候は見られない」と書いている。
イランのイスラム革命防衛隊は10日、「1979年のイスラム革命の成果を護持すること」が「レッドライン(越えてはならない一線)」になると表明した。イラン国軍も、最高指導者アリ・ハメネイの指揮のもと国益を守ると誓っている。2009年、2017〜19年、2022年の抗議運動を、目立った亀裂もなく乗り切ったこれらの機構は、内部の結束を維持しているというシグナルを発している。


