国内だけで約1000万人の患者がいるとされる変形性膝関節症。先進国では5人に1人が、膝の痛みや運動機能障害に苦しんでいる。Arktus Therapeutics(アルクタス セラピューティクス)は、佐賀大学と京都大学iPS細胞研究所の研究成果を生かし、その根本治療に挑む。iPS細胞とバイオ3Dプリンターを用いた世界初の軟骨再生技術による「100%細胞で作製する細胞製人工膝関節」の開発に取り組んでいる。
現在は、すり減った膝の関節部分を人工関節に置き換える治療法が一般的だが、約10年ごとに交換する必要がある。そのうえ術後の運動制限が大きく、活動的に過ごしたい人にとって満足のいく治療法ではない。これに対して、同社はiPS細胞からチューブ状の軟骨をつくり、膝の損傷部分に合わせて切り出して移植する。本物の軟骨に近い素材で生着するため、膝関節の痛みや機能障害の解消も可能になるという。
代表の大岩智大はこう話す。「将来的には個々の膝に最適な軟骨を、MRIなどの画像データをもとに作製して移植するような手術を目指しています。そうなれば膝の機能を取り戻し、理論的には我々の軟骨によってパフォーマンスの向上も見込めます」
大岩は、皮膚科医として働いた後、ボストンコンサルティンググループで製薬企業の上市戦略などを担当し、ビジネス感覚ももち合わせる。現在も週に一度は医師として勤務するかたわらで本事業を始めた理由は「生命にかかわる病気を治すことも大事だが、日常生活を支障なく、楽しく暮らせることも意義がある」と考えたからだ。
2025年9月には6億6000万円の資金調達を実施。30年の実用化に向け、26年に動物実験、27年から臨床試験に進む計画だ。
おおいわ・ともひろ◎京都大学医学部を卒業後、皮膚科医に。ボストンコンサルティンググループを経て2023年にArktus Therapeutics創業。iPS細胞技術の関節領域における臨床応用に取り組む。



