北米

2026.01.15 11:00

米国防総省の大幅な予算増額は米国を弱体化させる

米国のドナルド・トランプ大統領。2026年1月13日撮影(Anna Moneymaker/Getty Images)

米軍需産業がこれほど巨額の資金注入を活用できるかどうかについても、大きな疑問が残る。軍需工場の多くは既に製造能力の限界に達しており、現在の水準を超える余裕はない。潜水艦製造などの分野では熟練労働者が不足している。

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さらに、新たな資金が投資される可能性のあるシステムの中には、米国の安全確保にほとんど役立たないものもある。トランプ大統領が提案した人工衛星と人工知能(AI)、地上装置を組み合わせミサイル攻撃から防衛する「ゴールデンドーム」構想は、全くの夢物語だ。国防総省や軍需産業に携わっていない科学者の多くは、完璧なミサイル防衛システムは物理的に不可能だと指摘している。米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)」の試算によれば、ゴールデンドーム構想の費用は2920億~3兆6000億ドル(約46兆~570兆円)に上る。

国防総省は新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も全力で進めているが、既に当初の見積もりを大きく上回っている。元国防長官ら専門家は、ICBMは攻撃の警告を受けて大統領が発射の判断を数分以内に下す必要があり、誤報による偶発的な核戦争の可能性が高まることから、最も危険な兵器だと指摘している。急速に変化する世界の安全保障情勢に即した現実的な戦略を国防総省が策定する中で、ゴールデンドームと新型ICBMは再考すべき数多くのシステムのうちの一部に過ぎない。

国防総省には予算の増額ではなく、支出規律の強化が必要だ。さらに重要なのは、急な通知で世界中のどこでも戦えるように備えるのではなく、新たな戦略が必要だという点だ。議会は国防総省への大幅な予算増額案を称賛する代わりに、新たな支出が米国と同盟国の安全保障上、具体的に何を成し得るのかについて厳しい質問を投げかけるべきだ。私たちがより少ない費用でより優れた防衛体制を構築できることに気づく可能性は極めて高い。お金だけでは安全は確保できない。私たちが直面する最大の課題に対する冷静な分析と軍事力、賢明な外交、広範な経済的関与を融合した戦略が必要だ。道のりはまだ長いが、緊急性はかつてないほど高まっている。

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forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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