7月にカナダのEcobee社は新型サーモスタットEcobee3を250ドル(約3万円)で発売した。この製品はアップルのHomeKit準拠の認証を受けている。この認証の取得により、同社の売上は2倍に膨らんだという。同社は従業員数を7月から20%増やし、現在は120名に達した。
過去1年でEcobeeは米国のこの分野で2位の売上を記録し、市場シェアの24%を獲得したと、リサーチ企業NPDは推測する。別の調査会社Parks Associatesによれば今年、米国では約400万台のスマートサーモスタットが販売されている。
Ecobeeの売上は2015年に100万台近くになると予想される。同社は競合のHoneywell社の先に立ち、業界1位のグーグルのNestを追撃している。
EcobeeのCEOのスチュアート・ロンバードは市場2位のプレーヤになったことについて「重要なマイルストーンに立った。Honeywellを抜いただけでなく、Nestのシェアにも近づいている。来年の今頃には業界トップを目指したい」と述べた。
Ecobeeは6月にHomeKit認証の獲得をアナウンスした。アップルの認証を得ることは時間がかかり、簡単な手続ではなかった。メーカーらはアップルのMFi(Made for iPhone/iPod/iPad)プログラムの通過が義務付けられており、製品に認証チップを組込むことを要求される。
ロンバートCEOは「HomeKitに対応することで顧客の信頼感が得られた。ユーザーたちはこの製品が他の製品とシームレスに連携できることを評価している」と述べている。
アップル側としてもHomeKitにはかなりの注力ぶりを見せている。直近のiOS9では、“シーン”機能が追加された。これはユーザーの起床や外出等の場面に応じ、電気機器を自動設定するものだ。音声アシスタントのSiriもHomeKitにフォーカスし、その対応を進めようとしている。
2014年の発表当初のHomeKitには一部から不満の声も出た。WSJは当時、「この製品はあまり特徴がなく、未完成だ」と評価した。しかし、ロンバートCEOによると「HomeKitは時と共に進化し、アップルが本気で取り組む姿勢を見せている」と述べている。
たとえHomeKitとの連携が無くとも、Ecobee3は高い評価を得ていた。Ecobeeには家中に配置する複数の温度センサーが付属しており、収集したデータを基に室内の温度を調整する。Nestの場合は端末の周囲の温度だけを測定し、離れた部屋のデータは測れない仕様だ。EcobeeはPC Magazine等のレビューでもNestを上回る好評価を得ている。
“学習するサーモスタット”として2012年に発売されたNestはこの分野の先駆けだった。Nestはクラウド経由でソフトウェア更新を繰り返し、性能を向上させていく。この製品はユーザーの行動を“学習”し、快適性を維持しながらも家庭のエネルギー消費を抑える機能を持つ。Nestは最近、第3世代の商品を販売開始したばかりだ。
しかし、かつてはアップルストアでも販売されたNestは、アップルの棚にはもう並んでいない。現在ではEcobee3がアップルストアで購入可能な唯一のサーモスタット製品だ。
2014年にグーグルに32億ドル(約3850億円)で買収されたNestは、連携プログラムとしてWorks with Nestを用意し、他の製品と接続する。Nestはまた、端末同士が直接通信を行うプロトコル、Threadにも取り組んでおり、これを他の端末メーカーにも公開している。
アップルとグーグルの2社は、「コネクティッド・ホーム」の分野でも、また新たな戦いに挑もうとしている。