スポーツ

2026.01.19 17:15

「大谷翔平の熱狂」が創り出す日本の空洞化──ドジャースと阪神タイガースの陰で進行するスポーツビジネスの静かな危機

Jonathan Weiss / Shutterstock.com

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MLBのシーズン中、日本の朝は「ロサンゼルス」から始まるとして過言ではなかろう。試合中継が始まれば、そこにはドジャースのユニフォームを着て躍動する大谷翔平がいる。チームメートが頭を抱えるほどの特大の一打を放ったかと思えば、160キロ超えの剛球を投げ込み相手打者を手玉に取る。さらにメディアは彼が愛妻とレッドカーペットを歩く姿や愛犬デコピンとの触れ合いに至るまでこぞって報じ、日本中がその一挙手一投足に熱視線を送る。そこでは、大谷を追い海を超えた山本由伸と佐々木朗希までもが快投を見せ、異国の地での「世界最高峰」ショーが繰り広げられる。我々日本人はそこに自身の誇りを重ね、日々の活力とした。中継を目にせずにすんだとしても、今朝も大谷がホームランを叩き込んだというスマホのアラートで目を覚ます始末だ。

2025年はさらにトロント・ブルージェイズとのワールドシリーズでの激戦もあり、アメリカにおいてでさえ「最高の世界一決定戦」と称賛されただけに、日本列島までもが、かつてないほどのスポーツ熱に包まれているように見える。しかし、東京シリーズに始まったこの熱狂に、我々は欺かれていないだろうか。太平洋の向こう側にある輝かしい物語に関心と情熱を奪われる一方、足元の日本国内のスポーツ市場は、本当に活況を帯びているのだろうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルが発表した最新の「2025年スポーツマーケティング基礎調査」を、2024年の同調査と比較分析した時、そこに浮かび上がるのは、メディアが報じる熱狂とは裏腹の、冷めた日本スポーツ市場だ。前年に見られたV字回復の勢いはなく、25年は静かに、しかし確実に「後退」の局面にあるように見える。これは、日本スポーツ経済における「ドーナツ化現象」、深刻な産業の空洞化ではなかろうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルは、スポーツマーケティング基礎調査を共同で実施。2025年が22回目。マクロミルの調査専用パネルを利用したインターネットウェブ定量調査で、対象年齢は15から69歳。各年齢層で男女それぞれ200人、有効回答人数は男女それぞれ1000人ずつの合計2000人、調査期間は2025年9月。

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文=松永裕司

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