「DO市場」衰退が招く未来の損失
スポーツビジネスを支えるもう一つの柱、「DO(実施)」や「用品購入」の側面からも、不穏な兆候が見て取れる。スポーツは「観る」ものだけではない。「する」人がいてこそ、シューズが売れ、ウェアが売れ、健康産業が潤う。
しかし、日本人は身体を動かさなくなっている。25年の調査では、「スポーツをすることが好き」と答えた層が31.6%となり、前年の35.3%から約4ポイント近く低下。これは「スポーツ離れ」の前兆ではないのか。
具体的な実施種目を見ても、手軽な運動の代表格である「ウォーキング」や「ジョギング・ランニング・マラソン」の実施率が軒並み減少。2007年の東京マラソン初開催から、ランニングブームが市場を牽引したが、そのブームも沈静化したと言える。この「実施離れ」は、直ちにスポーツ用品市場への打撃となる。実際、25年の用品購入市場規模は3,612億円で、前年比1.2%減。24年には同市場が前年比14.7%増と好調だったことを踏まえると、この失速感は否めない。
さらに「運動不足を感じている」人は74.5%にものぼるが、その最大の理由は「仕事が忙しいから(32.9%)」であり、次いで「運動が好きではないから(24.4%)」である。社会全体の多忙化と、スポーツに対する心理的なハードルの高まり。これが、ナイキやアディダス、アシックスといったメーカーだけでなく、フィットネスクラブやスクールビジネスの首を真綿で締めるように苦しめる状況を生み出すかもしれない。
市場の全体的な停滞感の中で、唯一の希望として語られるバズワードが「推し活」だ。25年のレポートでは、男性の9.9%、女性の4.7%がスポーツ関連の「推し活」を行っていると報告されている。特にプロ野球では、ファン人口の13.7%が「コアファン(熱狂度高)」であり、彼らはチームの勝敗を超え、特定の選手やチームそのものを応援することに生きがいを感じている。
スポーツ関連の「推し活」で過去1年間に使った金額(n=134)

しかし、推し活を行っている層の過去1年間の消費額分布を見ると、最も多いボリュームゾーンは「1万円〜2万円未満(23.1%)」であり、次いで「5000円〜1万円未満(14.9%)」。年間10万円以上を消費する「太客」は、推し活層全体の9.0%に過ぎない。アイドル市場やアニメ市場における「推し活」は年5万円以上消費する層が50%を超える。10万円以上の消費が20%とされる爆発的な客単価と比較すると、スポーツの「推し活」はまだ大人しい。
ユニフォームやタオルを買って、年に数回観戦すれば、それで「1〜2万円」には達してしまう。つまり、多くの「推し活」ファンは、実はそこまで重課金しているわけではない。加えて、スポーツの「推し活」は選手個人への愛着に紐づくことが多い。選手が移籍・引退すれば、その熱量は瞬時に霧散する。海外流出が加速する日本スポーツ界において、「推し活」依存は揮発性の高い、不安定な収益源と言えよう。この収入源を安定、継続化させる戦略が必要とされる。


