ハメネイは、現在の危機から抜け出す唯一の道は亡命だと判断している可能性がある。彼の支持基盤の大半はすでに離反している。かつてハメネイに最も忠実だった集団の一つはバザーリ(商人層)だった。彼らは1978~79年の革命でシャーの打倒に決定的な役割を果たした。ところが現在、バザーリは大アヤトラのハメネイに背を向けている。イラン経済の惨状や自由化政策に不満や不信感を深めているためだ。
当然のことながら、学生たちも今回の抗議運動の最前線に立っている。学生たちもまた、イラン革命の成功に不可欠な集団だった。
ハメネイの「無敵のオーラ」もひどく損なわれている。彼は86歳で、身を潜めて生活している。次から次へと起こる危機に耐え続ける体力があるのかは不明だ。抗議行動が続けば、シリアのバッシャール・アサド前大統領がしたように、ハメネイもモスクワへ逃れる可能性があるとの報道も出ている。
イランの軍事組織が適切な「出口」を見つけるのはもう少し複雑になる。イランの軍事・治安組織のなかで最も強力なのはイスラム革命防衛隊である。革命防衛隊は建設、海運、エネルギー、銀行、消費財など、イラン経済の広範な分野を支配しており、数百億ドル規模の利益をあげている。革命防衛隊は石油の密輸にも関わっており、2024年には代理勢力分と合わせて10億ドル(約1590億円)程度稼いだとされる。歴史を振り返ればわかるように、革命防衛隊は現状を維持するためなら国民の弾圧も厭わない組織だ。
とはいえ体制側はいま、近年でも最も弱い状態にある。昨年6月、イスラエルと12日間にわたり繰り広げた戦争は、イランの脆弱性を露呈させ、防空能力、核開発計画、ミサイル備蓄にダメージを与えた。イランの支援を受けてきたイスラム組織、パレスチナ自治区ガザのハマスやレバノンのヒズボラも深刻な打撃を受け、シリアではもはやイランに従属しない新政権が誕生した。
革命防衛隊の指揮官多数も殺害されるか排除された。一方、イランは経済問題に対処するため、米国との交渉を試みる必要にも迫られている。米国が今月、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束したことも、イランの体制側の戦略的な計算に影響を与えているのは間違いない。イランの政権は、自分たちがトランプの次の目標にされかねないことを理解している。
ハメネイの体制はいよいよ終わりが見えてきたのかもしれない。イランの政権は著しく弱体化し、国民はこれまで以上に不満を募らせ、しかも組織化が進んでいる。たとえ体制側がこの抗議行動をどうにか切り抜けられたとしても、危機後にはかつてないほど脆弱になっているだろう。


