マーケティング

2026.01.16 13:45

ヴァセリンがSNS上の「ライフハック」をジャッジ。売上43%アップの施策

ユニリーバー社の「ヴァセリン・ヴェリファイド」(YouTubeより)

ユニリーバー社の「ヴァセリン・ヴェリファイド」(YouTubeより)

SNSが大きな影響力を持つようになった現代では、商品にとって、そして生活者にとっても害悪となりかねないコンテンツがネット上に溢れるようになった。こうしたコンテンツに対して、企業側の意思を反映させることは非常に難しい。

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そんな中、SNSを見事に使いこなしたユニリーバー社の「ヴァセリン・ヴェリファイド」を紹介しよう。この事例は、2025年のカンヌライオンズでソーシャル&クリエイター部門グランプリ他を受賞した。

 オープン前日の日曜日夕方、急ピッチで準備が進む会場。(筆者撮影)
 オープン前日の日曜日夕方、急ピッチで準備が進むカンヌライオンズの会場(筆者撮影)

「ヴァセリン」は150年以上の歴史を持ち、知名度と信頼を得ているスキンケア・プロダクトである。近年では、ユーザーがこの商品の別用途での活用法を指南する“ハック動画”を公開し、膨大な数のビューを生み出している。それらの中には、人体に悪影響を及ぼす危険な使い方を提案するものも少なくない。歯のホワイトニングに用いたり(事例ビデオでは日本の例が登場)、目に塗る、食べるなどのハックは決して推奨できないし放置もできない。ブランドの信頼感に悪影響を及ぼしかねない状況だった。

そこでヴァセリンはSNSの世界に踏み込んだ。TikTokやInstagramでユーザー(クリエイターと呼ばれる)によって公開されている独自の「ハック術」に対して、同社の研究員が科学的にテストを行い、その使用法が“VERIFIED(認証済み)”か“UNVERIFIED(未認証)”かをジャッジする「ヴァセリン・ヴェリフィド」を実施したのだ。

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Vaseline - Vaseline Verified (case study)

SNSプラットフォームで見られる「認証マーク」を参考にして、商品パッケージを連想させるヴァセリン独自の認証済みマークを開発、安全性が認められた450以上の使用法に付与した。

さらに認証済みマークをパッケージ化した商品(トロフィーと呼んだ)を、クリエイター達に送付。クリエイター達は、自身の使用法がオフィシャルに認められたことを誇り、面白がってその状況をさらにSNSに投稿する。こうして、SNS上での“ハック動画”はみごとに「ヴァセリンの広告」となったのだ。

結果として、売上は43%もアップし、キャンペーンへの好意的評価は87%、SNS上での反応は6330万回以上を記録したという。

ちなみに、この事例がグランプリを受賞したカンヌライオンズの「ソーシャル&クリエイター部門」の2024年までの部門名は、「ソーシャル&インフルエンサー部門」で、2025年から名称変更をした。クリエイター(Creator)という言葉は、従来、欧米の広告業界では使われて来なかった。広告会社のクリエイティブ部門に所属するコピーライターやアートディレクターに用いられる言葉は、「クリエイティブ(Creative)」である。They are creatives というように名詞として、人を表す言葉として使われて来た。

しかしここ数年、英語圏では、クリエイター(Creator)という言葉を、作品を通して発信するインフルエンサーに対して用いるのが一般的となった。その人々が形成するビジネスを「クリエイターエコノミー」と呼ぶのも、スタンダードになっている。そんな環境から、カンヌライオンズのこの部門の名称も変更されたと考えられる。

SNSは企業のものではなく、クリエイターやユーザーのものだ。だから、必ずしも企業や商品にとって望ましい状態で話題が繰り広げられるとは限らない。しかし、そのプラットフォームに相応しい形で、上手に企業がステップインしていけば、かなりの成果が期待できる。そんなことを思わせる事例だった。

文=佐藤達郎

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